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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年3月23日 No.3584 海洋プラスチックごみ問題への国際的対応 -環境委員会廃棄物・リサイクル部会

経団連は2月17日、環境委員会廃棄物・リサイクル部会(山田政雄部会長)をオンラインで開催した。環境省水・大気環境局水環境課の大井通博課長から、海洋プラスチックごみ問題への国際的対応について、また、東海大学政治経済学部経済学科の山本雅資教授から、経済学の視点からみた循環経済について、それぞれ説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 海洋プラスチックごみ問題への国際的対応(大井氏)

(1)海洋プラスチック汚染の発生状況

プラスチックの海洋への流出が続いている。

国連環境計画(UNEP)は、全世界における2015年のプラスチックの環境への排出量をライフサイクルの各過程で算出し、約828万トンと推計している。

また、海洋へのプラスチック流出の累積量について、50年には海洋中の魚の量より多くなる(重量ベース)との試算も出ており、世界全体で対策が急務となっている。

(2)大阪ブルー・オーシャン・ビジョンと実施枠組み

海洋プラスチック汚染対策を進めるべく、19年にG20「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」(注)「G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組」が採択された。これらについて、G20以外の国々への共有等、日本がイニシアティブをとるかたちで取り組みが進められてきた。

(3)プラスチック汚染に関する条約交渉

こうした動きを踏まえ、22年3月の国連環境総会(UNEA)で、条約づくりに向けた、政府間交渉委員会(Intergovernmental Negotiating Committee, INC)の設置および24年末までに作業完了を目指すことが決議された。

INCの第1回会合(INC1)は22年11月28日~12月2日、ウルグアイのプンタ・デル・エステにおいて開催され、約150カ国から2300人以上が参加した。

同会合における各国・地域の発言からは、概ね意見が一致し条約の方向性となりそうな点がある一方、今後交渉の論点となりそうな点も浮き彫りとなった。

概ね意見の一致がみられた点としては、人の健康、生物多様性および環境の保護を条約の目的とすること、世界共通の目標設定、国別行動計画の策定、科学的知見の集積・共有などがあった。

一方、今後論点となりそうな点としては、プラスチックの製造段階における取り組みとして世界共通の規制の必要性、技術面・資金面等での支援のあり方などがあった。今後、23年に2回、24年に2回の会合が予定されており、条約の採択は25年以降となる見込みである。

■ CEとは何か~国際比較の観点から(山本氏)

(1)統計からみる日本の廃棄物・リサイクル

日本の廃棄物の焼却率は世界的にみても高い。EUにおける廃棄物処理の優先順位では、焼却は最終手段とされており、熱回収を行った場合でも一定以上の回収でないと「廃棄」とみなされる。また、わが国の廃棄物分野の温室効果ガス(GHG)排出量は総排出量の3.3%を占めており、カーボンニュートラル(CN)実現の観点からも、わが国の循環資源の利活用の改善を図るべきと考える。

(2)CEとは何か

循環経済(サーキュラーエコノミー、CE)の定義については、EUやわが国をはじめ、さまざまな考え方が示されているが、目指す世界は一緒だと考えられる。

(3)産業競争力の向上に向けて

CEはこれまで、環境負荷低減・自然資源保全という次元の問題としてとらえられていた。しかし、近年の天然資源価格の高騰などから、経済安全保障強化への貢献も期待されている。こうしたことからCEへの潮流は避けられないといえる。

CEは、これまでの廃棄物・リサイクル対策を超えた広い概念で、全く新しい市場を生み出す可能性があり、成長のきっかけとなり得る。

◇◇◇

会合ではこのほか、「循環型社会形成自主行動計画2022年度フォローアップ調査結果」を審議し、了承された。

(注)G20大阪サミットで採択された海洋プラスチック汚染に関するグローバルビジョン。50年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減することを目指す

【環境エネルギー本部】

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