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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年3月30日 No.3585 提言「こども・子育て政策の強化に関する考え方」を公表 -小倉こども政策担当相に建議

小倉大臣(左)と清水委員長

経団連は3月14日、提言「こども・子育て政策の強化に関する考え方」を公表するとともに、16日に清水博人口問題委員長が小倉將信こども政策担当大臣に同提言を建議した。

わが国の2022年の出生数は速報値で80万人を割った。人口減少への危機意識と対応の必要性について国民理解を醸成することが重要である。

政府は、「将来的なこども・子育て予算の倍増」を打ち出し、3月のたたき台取りまとめ、および6月の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針)に向けて検討を進めている。こうした状況を踏まえ、企業自ら取り組むべき課題への決意を表明するとともに、給付拡充に必要な財源・負担に関する国民的議論の必要性を示すべく、取りまとめたもの。提言の概要は次のとおり。

■ 企業が自ら取り組むべき課題とは

若い世代の結婚・出産の希望の実現に向け、企業が果たすべき役割は、処遇等の質の高い雇用の創出、構造的な賃金引き上げ、これから子育てを担う若年層への重点配分、有期雇用等労働者の正社員化やキャリア形成支援の推進、働き方改革等に取り組むことである。

なかでも重要なのは、男性の家事・育児の参加促進である。わが国男性の家事・育児の時間は主要先進国のなかで極端に短く、女性の就業率が上昇するなか、仕事、家事、育児と負担が女性に大きく偏っている。こうした状況が希望する数の子どもを産み育てる障壁となっているとも指摘される。

企業としては、男女が共に仕事、家事、育児を日常的に行えるよう、経営トップのコミットメントを強化し、両立支援制度等を設けることにとどまらず、男性の継続的な家事・育児につなげるべく、働き方改革、男性の育児休業取得推進等、社内の環境整備や意識改革に積極的に取り組む必要がある。

■ 財源と負担に関する国民的議論の必要性

こども・子育て政策の強化に向けて、さまざまな給付拡充メニューが検討されている。これらの実現には新たな財源、すなわち負担の増加が必要となるが、現状では国民の理解が必ずしも深まっているとはいえない。

数兆円規模の新たな財源確保が避けられない以上、歳出改革や、世代間の給付と負担のバランス確保とあわせて、税、社会保険料、国債等、考え得る財源のベストミックスを実現すべきである。

このうち、社会保険料の負担増のみによって財源を確保する方法は、企業が処遇改善、賃金引き上げに懸命に取り組むなかで、子育て世帯をはじめとする若い世代の可処分所得の増加を抑制しかねない。

今後の議論を通じて、政策の優先度を見極めたうえでメリハリを付け、社会全体で幅広く支えるとの趣旨に合致した財源を確保すべく、合意形成を図っていくことが望まれる。

■ おわりに

妊娠・出産の中心となる15~49歳の女性人口が減少を続けるなか、今後もわが国における人口減少は加速していく。

こうした現実から目を背けることなく、変革のチャンスととらえ、こども・子育て政策の強化だけではなく、国を挙げて「人口減少に耐え得る社会システムの構築」も同時に進めていく必要がある。

【経済政策本部】

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