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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年3月30日 No.3585 日本学術会議法の見直しに対する考え -イノベーション委員会企画部会

経団連は3月8日、イノベーション委員会企画部会(江村克己部会長)を開催した。日本学術会議(学術会議)の菱田公一副会長と小林傳司アドバイザー(会長補佐)から、日本学術会議法の見直しに対する考えについて説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 学術会議の見直しに向けた独自の取り組み

学術会議を見直すうえで、各国アカデミーとの相違点を把握する必要がある。学術会議の会員は任期に基づき半数ずつ改選されるが、欧米のアカデミーは終身会員制である。会員の選出の際に政府の介入を受ける例はない。また、米国アカデミーは年間約578億円の予算がある。これに対し、学術会議は毎年約9億5000万円の公的資金がついているが、大部分は事務局職員の人件費や国際機関の分担金等に充てられている。会員は、実質ボランティアで活動している。欧米は政府機関ではないが、近代国家が成立する以前に設立されたからであり、上からの西洋化を行った日本とは事情が異なる。

2020年10月に始まった第25期学術会議は、21年4月に取りまとめた「日本学術会議のより良い役割発揮に向けて」に基づいて改革を進めてきた。まず、科学的助言機能の強化に向けて、中長期的視点、俯瞰的視野のもと、重点課題について分野横断的に議論するために、委員会や分科会を連携させる仕組みを構築した。

また、会員選考プロセスについては、会員候補者に関する情報提供の依頼先を学協会に加え、大学関係団体、産業界等にまで拡大したほか、学際分野や新たな学術分野からも積極的に会員を確保しようと努めている。

このような独自の取り組みを政府に示しつつ進めていた矢先、22年12月に、唐突に政府から日本学術会議法の改正を骨子とする「日本学術会議の在り方についての方針」が打ち出された。

■ 政府の日本学術会議法の見直し案に対する懸念

政府が提示している日本学術会議法の見直しは、学術会議が独自に取り組んできた内容(科学的助言機能の強化、会員選考における多様な関係者からの情報提供等)と一部重なっている。

他方、政府の見直し案では、会員および連携会員以外の有識者により構成される選考諮問委員会(仮称)を新たに設置し、委員は「一定の手続き」を経て会長が任命するとされている。この「一定の手続き」の内容を明らかにするよう求めているが、政府から具体的な回答が得られていない。会員選考に際し、政府から介入されることを懸念している。また、「日本学術会議は、選考諮問委員会の意見を尊重しなければならない」とされており、この文言を法律に盛り込むことの意味を非常に重く受け止めている。

本来、「日本学術会議のより良い役割発揮に向けて」の内容をベースに政府と意見交換し、法改正の必要性の有無や予算の検討を行うという段取りで議論すべきである。しかし、現状は政府が一方的に提示した見直し案に対応することに追われており、本来学術会議として議論すべき課題に取り組むことが難しい状況になっている。

【産業技術本部】

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