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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年5月18日 No.3590 「サステイナブルな資本主義に向けた好循環の実現」を公表

経団連(十倉雅和会長)は4月26日、「サステイナブルな資本主義に向けた好循環の実現~分厚い中間層の形成に向けた検討会議 報告」を公表した。

これまで経団連は、さまざまな社会課題を解決するとともに、日本経済を再び成長軌道に戻すべく、「サステイナブルな資本主義」を掲げてきた。報告書では、サステイナブルな資本主義の実現を支え、経済社会の中心的な役割を担うのは、「分厚い中間層」であるとした。社会全体の底上げを通じた分厚い中間層の形成は、行き過ぎた資本主義がもたらした社会問題の一つである格差の解決に直結する。加えて、分厚い中間層自身がさらなる需要を生み出し、経済成長に寄与する。目指すべきは「多くの人が中間層として経済的な豊かさを実感し、多様なウェルビーイングやそれぞれの希望が叶えられる社会」であるとした。

報告書では、こうした基本的考えに基づき、2030年をめどに成長と分配の好循環を着実なものとし、「分厚い中間層」を形成すべく、必要となる政策のあり方を包括的に取りまとめた。

大きな政策の柱は、「マクロ経済政策」「社会保障・税制」「労働政策」の三つであり、図は三つの政策と好循環の関係を示したものである。図の中央にある「持続的な経済成長」と「分厚い中間層の形成」「構造的な賃金引上げ」との間で好循環を生み出すためには、部分的な改革ではなく、三つの柱すべてについて、全体感を持って政策を推し進めていくことが肝要である。

「成長と分配の好循環」と各政策の関係

■ ダイナミックな経済財政運営

マクロ経済政策においては、官民連携による「ダイナミックな経済財政運営」の展開が重要である。政府と企業がそれぞれの役割を果たすことで、マクロ経済環境を好転させるとともに、中長期的に財政健全化を実現させることを目指す。

政府においては、民間の予見可能性を高める長期計画的な投資等により、民間の投資環境を改善させる。政府投資にあたっては、科学技術・産業の成長・発展やさまざまな社会課題の解決に向け、民間のみでは実現困難な戦略分野に注力すべきである。

一方、企業は、積極的な国内投資と賃金引上げを行っていく。官民あわせた取り組みにより、経済は持続的な成長軌道にシフトし、税収増等により、政府の財政健全化も図られることとなる。

■ 公正・公平で安心な全世代型社会保障・税制

成長と分配の好循環を支える基盤として、「公正・公平で安心な全世代型社会保障・税制」の構築が重要になる。「適切な負担」と「働き方に中立な仕組み」を通じて、個人消費の増加や労働移動・参加を促していく。

わが国の社会保障の財源は、社会保険料が中心となってきたが、国民所得が伸びないなかで、保険料負担が拡大し、中間層を圧迫してきた。今後は、社会保険料だけでなく、さまざまな税財源の組み合わせによる新たな負担も選択肢とすべきである。

また、働き方に中立な仕組みを確立する観点からは、社会保険の適用拡大を進め、勤務先の違いによらず被用者保険に加入し、給付を厚くするとともに、賃金要件を引下げ、いわゆる「106万円の壁」や「130万円の壁」による所得減を縮小すべきである。

■ 労働分野における課題

分厚い中間層の形成に向けては、構造的な賃金引上げが欠かせない。

政府においては、雇用のセーフティーネットを、現行の「雇用維持型」から「労働移動推進型」へと移行させる必要がある。その際、上述の「ダイナミックな経済財政運営」によりマクロ経済環境を良好に保つことで、労働者の採用・定着に向けた企業間競争を促すことが重要である。

企業においては、賃金引上げのモメンタムの維持・強化に加え、エンプロイアビリティーの向上に向けて人材育成やリスキリングに取り組む必要がある。さらに採用方法の多様化や、「自社型雇用システム」の確立等を通じ、円滑な労働移動に資する社内制度を整備していく。

【経済政策本部】

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