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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年7月20日 No.3599 米国の通商政策や中国・台湾をめぐる取り組みに関する懇談会を開催 -カトラーASPI副所長らが講演/米国の通商政策・台湾・下院中国特別委員会について聴く

カトラー氏

マリー氏

経団連(十倉雅和会長)のアメリカ委員会連携強化部会(豊川由里亜部会長)は6月30日、ウェンディ・カトラー アジア・ソサエティ政策研究所(ASPI)副所長とロジャー・マリー Akin法律事務所シニアポリシーアドバイザーの来日の機会をとらえ、東京・大手町の経団連会館で懇談会を開催した。両氏による説明の概要は次のとおり。

■ IPEF

2022年5月の東京でのインド太平洋経済枠組み(IPEF)発足以来、参加14カ国は精力的に各種交渉を推進してきた。23年5月にはIPEFサプライチェーン協定交渉の実質妥結が発表された。協定交渉では、(1)IPEFサプライチェーン協議会(2)IPEFサプライチェーン危機対応ネットワーク(3)IPEF労働権諮問委員会――の三つの組織を設立することが合意された。プロセス重視の控え目な合意であると評価する。IPEF参加国はAPEC加盟国と多くが重複していることから、11月のAPEC首脳会議の際に開くことを企図しているハイレベル会合で成果を出すべく交渉を進めている。しかし、課題も多い。インドとフィジーはIPEFが目指す高水準の合意形成に水を差すだろうし、米国はIPEF参加国に技術支援等を通じた海外直接投資の誘致促進など、IPEFに参加することの具体的な利益を示す必要があるだろう。

■ 台湾

5月に米国通商代表部(USTR)は「21世紀の貿易に関する米国・台湾イニシアチブ」の第1段階の協定として、税関手続きおよび貿易円滑化、良き規制慣行、サービスの国内規制、反腐敗、中小企業の5分野の合意を発表した。この協定をめぐり、バイデン政権は、関税削減を含まないので国内法の改正および議会の承認は不要との立場をとっている。一方、連邦議会は、合衆国憲法が外国との通商を規制する権限を議会に付与していることを根拠として議会承認が必要だと主張し、6月には上院財政委員会と下院歳入委員会が議会承認を必要とする超党派の法案を発表している。今後、こうした政権と議会の間の対立が、IPEFの交渉にどのような影響を及ぼすか注視する必要がある。

■ 米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会

下院に設置された米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会は、他の通常の委員会と異なり、法案を承認する能力は与えられていない。一方、幅広い分野について報告書をまとめ、他の委員会の活動に影響を及ぼすことが可能であり、共和党・民主党の指導部から強い支持を得て活動している。共和党のギャラガー議員が委員長を務め、クリシュナムルティ議員が民主党側のランキングメンバー(野党筆頭委員)を務める。両議員は、委員会設置以前から米国内でのTikTokの運用を禁止する法案を共同で提出するなど、政党の垣根を越えて深い関係を有している。同委員会は、早速5月に新疆ウイグル自治区と台湾に関する政策提言を採択したが、今後も超党派で積極的に政策提言する方針を示している。引き続き、中国で事業を行うことの危険性や、バイデン政権の中国戦略などについて、数多の公聴会を予定しており、今後の動向に高い関心が寄せられている。

【国際経済本部】

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