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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年9月7日 No.3604 北海道プライムバイオコミュニティを視察 -バイオエコノミー委員会

経団連(十倉雅和会長)のバイオエコノミー委員会(小坂達朗委員長、岩田圭一委員長)は8月1日から3日にかけて、小坂委員長を団長とする総勢15人の視察団を北海道に派遣した。政府から認定を受けた地域バイオコミュニティである北海道プライムバイオコミュニティ関連施設を視察し、グリーンバイオ(食糧・植物分野)のうち一次産業における取り組みについて、最新状況を把握するとともに関係者らと意見交換した。

北海道プライムバイオコミュニティを訪問

■ KUBOTA AGRI FRONT

安部昌彦KUBOTA AGRI FRONTファシリティ・マネージャーから、2023年春に開設された農業学習施設「KUBOTA AGRI FRONT」の概要について説明を聴いた。同施設では、人が生きていくうえで欠かすことができない食と農業の魅力・可能性を共に学び、未来に向けて考える場を提供している。屋内栽培エリアでは、効率的・安定的な農業生産を行うための技術が展示されており、最新農業技術(アグリテック)を体感することができる。具体的には、自動化技術と一部AIを活用して環境管理されたハウス内で、イチゴ、アスパラガス、トマトが栽培されている。トマトは水と養分のみを通し細菌・ウイルスを通さない特殊なフィルム上に植えられ、葉の生育の様子をとらえた画像診断を基に自動給水される仕組みが構築されている。さらに、アスパラガスはロボットにより農薬散布が自動化されている。

■ 竹中工務店北海道地区FMセンター

藤田純也竹中工務店北海道支店専門役から、森林資源と地域経済の持続可能な好循環を生み出すための同社の取り組みおよび中高層ビルの木造建築に向けた技術開発の状況について説明を聴いた。同センターも木造とすることで、鉄骨造に比べて、躯体だけで約70%のCO2の削減が達成されており、脱炭素化に大きく貢献している。耐火性能や架構形式の工夫により、北海道はじめ全国各地で公共建築物や民間事業所などの非住宅部門で木造化・木質化が推進されている。

■ 自立型ナノグリッド

説明する松野市長

松野哲岩見沢市長および山田真治日立製作所研究開発グループ日立北大ラボ長から、岩見沢市における自立型エネルギーシステム(ナノグリッド)およびそれを活用したスマート農業の取り組みについて説明を聴いた。同市では、(1)市内の温泉から出るメタンガスに軽油やバイオ燃料を混合したマルチ燃料エンジン(2)太陽光パネルから得られた電力の農薬散布用自動ドローン等への活用――といったプロジェクトを進めている。23年11月をめどに、ナノグリッドで発電されたエネルギーをバッテリーに蓄電して、農繁期には農作業の電動作業機械に電力を供給する一方、農閑期には地域内の電気自動車(EV)充電拠点として使用する社会実装を進める。

■ スマート農業教育研究センター

野口伸北海道大学大学院農学研究院長・教授から、8月31日に開所式を迎えるスマート農業教育研究センターの取り組みについて説明を聴いた。同センターでは、大学構内および岩見沢市などの農地にある農業機械を北海道大学内の拠点からリモートで操作している。農作業のロボット化による省力化、AIロボットによる熟練技術の体得もあわせて進め、人手不足が深刻な農業の新しいかたちとして、スマート農業の日本モデル構築を目指す。

■ 北海道ワイン教育研究センター

曾根輝雄北海道ワイン教育研究センター長・北海道大学大学院農学研究院教授から、22年4月に設立された同センターの取り組みについて説明を聴いた。23年秋にはセンター棟が竣工し、大学院生向けワイン講座を通じた人材育成や、ワイン農家が使用できる分析機の提供、ワインの味わいに影響を与える微生物解析に向けたラボの設置を行う予定である。また、一般向けのワインテイスティングやカフェを整備する構想もあり、学際的連携を通じ、地域の重要産業であるワイン産業の持続的発展を目指す。あわせて宝水ワイナリー(岩見沢市)を訪問。ワイン生産者から土地や気候に合った品種選定・栽培方法について説明を聴いた。

■ 北海道大学、北海道庁、ノーステック財団

増田隆夫北海道大学理事・副学長、水口伸生北海道庁次世代社会戦略監、福島知之ノーステック財団専務理事から、北海道プライムバイオコミュニティのビジョンおよび具体的な活動内容について説明を聴いた。同コミュニティでは、魅力的で持続的な一次産業を振興するため、農水林分野において、スマート化・低環境負荷・人材育成を進めている。その際、アカデミア発のシーズ起点の発想ではなく、地域との連携を通じ現場の課題抽出を入念に行ったうえでプロジェクト化が行われている。

説明後、同コミュニティの活動をさらに強化するため、既存の強みの一層の強化、スタートアップ振興、次世代人材育成、知的財産戦略などの重要性をめぐり、闊達に意見交換を行った。同コミュニティと経団連との間で、今後も連携を継続することで一致した。

【産業技術本部】

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