1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2023年9月14日 No.3605
  5. むつ小川原開発推進委員会2023年度総会を開催

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年9月14日 No.3605 むつ小川原開発推進委員会2023年度総会を開催

経団連のむつ小川原開発推進委員会(泉澤清次委員長)は8月8日、東京・大手町の経団連会館で2023年度の総会を開催した。むつ小川原開発地区(青森県六ヶ所村)は、総合的なエネルギー・研究開発拠点として、原子力、再生可能エネルギー等の関連施設が立地している。総会では、同地区における開発の最新状況と、同委員会の2022年度活動報告・収支決算および2023年度活動計画・収支予算が報告された。

これに先立ち、内閣府の稲田剛毅科学技術・イノベーション推進事務局参事官(当時)から「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」について、また京都フュージョニアリングの共同創業者である長尾昂代表取締役と小西哲之取締役から、核融合ビジネスの課題と今後の展望について、それぞれ説明を聴くとともに懇談した。説明の概要は次のとおり。

■ 内閣府

稲田氏

カーボンニュートラルの実現とエネルギー安全保障の両立に向け、海に豊富に存在する重水素等を燃料として使用し、発電時に二酸化炭素を排出しない核融合発電を実現することが、わが国で重要となっている。世界でも重要性が認識されつつあり、近年、各国の政府予算や民間投資が急拡大している。核融合で使用される技術の開発において、わが国はトップを走っている。しかし、核融合の実用化に向けた競争が世界で加速するなか、諸外国に遅れることなく、わが国の技術を中心とする核融合発電を実用化するためには、技術開発の加速にとどまらず、関連産業の育成が急務である。

そこで、内閣府に設置した有識者会議における議論に基づき、初の国家戦略である「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」を23年4月に策定した。同戦略は、産業の育成戦略、技術開発戦略、推進体制の三つの柱から成る。第1の柱である産業育成戦略としては、さまざまな技術の集合体である核融合のビジネスチャンスを明確にするため、開発のターゲットとなる技術・産業マップを作成する。また、官民の協議会を立ち上げてビジネスマッチングを行うとともに、安全規制に関する国際議論にも参画していく。第2の柱である開発戦略としては、ゲームチェンジャーとなり得る小型化・高度化等の独創的な新興技術のサポートを強化する。第3の柱である推進体制としては、内閣府が政府の司令塔となって戦略を推進し、産学官民連携のイノベーション拠点の整備や、国民理解のための戦略的アウトリーチ活動を展開していく。なお、文部科学省でも「原型炉(注)開発に向けたアクションプラン」とあわせて、将来の原型炉開発を見据えた新規の研究開発事業について、24年度の概算要求を検討中である。

■ 京都フュージョニアリング

長尾氏

京都フュージョニアリングは、京都大学発のスタートアップとして、核融合ビジネスと技術開発の双方を展開している。

昨今、世界で核融合スタートアップの増加が著しく、さまざまな種類の炉型の開発を行う企業が立ち上がっている。なかには資金調達額が数千億円規模に上る企業も出てきている。この背景として、気候変動対策やエネルギー安全保障の重要性の高まり、将来の電力需要の大幅な拡大が見込まれることが挙げられる。

多くの企業の事業領域は、核融合の反応を起こす部分に集中しているが、当社は、核融合プラント関連装置・システムの技術開発や、プラントエンジニアリングをビジネスモデルとしている。将来的に、周辺産業は90兆円規模の巨大な世界市場になるといわれており、現時点において5000億円規模の周辺産業が育っている。

将来、プラントを建設する場合、顧客の需要や立地場所に合わせて最適な炉型を選択できるとよい。優れた技術を持つ日本企業や研究機関・大学等と連携し、さまざまな顧客に対応していきたい。今後は、実用化に向けて予見可能性を高めるため、安全規制の議論も進めつつ、産学官連携を加速し、ITERプロジェクトとともに、原型炉の実現に向けた取り組みの進展を期待する。

(注)核融合実験炉「ITER」の成果に基づき、次に建設される核融合装置

【環境エネルギー本部】

「2023年9月14日 No.3605」一覧はこちら