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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年10月5日 No.3607 政府の「中長期の経済財政の枠組み」 -経済財政委員会企画部会

経団連は9月8日、東京・大手町の経団連会館で経済財政委員会企画部会(伊藤文彦部会長)を開催した。内閣府の福田光政策統括官(経済社会システム担当)付参事官(企画担当)から、政府の中長期の経済財政の枠組みについて説明を聴いた。概要は次のとおり。

1.現在の中期的な経済財政の枠組み

政府は今後、次期「中期的な経済財政の枠組み」の検討を進める予定である。まずは足元の状況を紹介する。

経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2021では、財政健全化目標として、「2025年度の国・地方を合わせたプライマリーバランス(PB、財政収支から利払い費を除いた額)黒字化」というフローの目標、「債務残高対GDP比の安定的な引き下げ」というストックの目標の二つが示されている。

23年7月に内閣府が公表した「中長期の経済財政に関する試算」を踏まえると、生産性上昇等による高い成長のもとで歳出効率化努力を継続すれば、25年度のPB黒字化が視野に入る(図表参照)。

中長期の経済政策に関する試算(2023年7月内閣府)

(図表のクリックで拡大表示)

政府の収支改善を進めるには、経団連が4月に公表した報告書「サステイナブルな資本主義に向けた好循環の実現」や骨太方針2023で提示されているように、官民連携で企業の投資を促進し、企業の投資超過へのシフトや国内経済の活性化を志向していくことが肝要となる。

こうした「経済あっての財政」という考え方が、政府の新たな中期的な経済財政の枠組みを検討する際にもカギとなるだろう。

2.諸外国の財政規律

主要先進国の財政ルールをみると、例えば米国では、ペイ・アズ・ユー・ゴー法で、新たな恒久的施策等の導入の際、それに見合う財源の確保が義務付けられている。また英国では、予算責任憲章において、公的部門の財政収支対GDP比を27年度までにマイナス3%以内に抑制すること、EUの是正的規律では、加盟国に対して毎年の財政収支対GDP比をマイナス3%以内に抑制するとともに、債務残高対GDP比を60%以内にすることを規定している。

こうした財政ルールを維持するために、いずれの国も、歳出のコントロールを主たる手段としている。わが国も歳出効率化に向けて努力してきているが、それぞれの国の実情に即した歳出管理のあり方を考えていく必要がある。

3.ドーマー条件とその示唆

PB黒字化目標の期限が近づいているなかで、債務残高対GDP比引き下げの重要性がより増してくると考えられる。そこで、過去の債務残高対GDP比の変動要因を再確認してみる。

財政の安定化条件とされる「ドーマー条件」を基に要因分解すると、01年から12年にかけては、日本の債務残高対GDP比が欧米諸国よりも悪化したのは、PB赤字が大きかった点はあるとしても、当時は日本だけがデフレだったことが主因とわかる。

その後、12年から18年にかけては、世界的に債務残高対GDP比が横ばいで推移した。多くの国でPBは赤字だったものの、世界的な低金利により、名目GDP成長率が実効金利(利払い費を前期の債務残高で除して算出する金利)を上回ったためである。

このような分析からも、デフレ脱却や経済成長が、財政健全化に資することが示される。債務残高対GDP比の引き下げを考えるうえでは、PBと金利と成長率の関係に留意した経済財政運営が重要になる。

◇◇◇

説明後、日本で財政規律の上限を定めた場合の影響、歳出効率化への課題、歳入面で今後取り組むべきことなどをめぐり、議論が交わされた。

【経済政策本部】

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