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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年10月26日 No.3610 提言「中長期視点での全世代型社会保障の議論を求める」を公表

経団連は10月17日、提言「中長期視点での全世代型社会保障の議論を求める」を公表した。

■ 提言の背景

全世代型社会保障制度は、生涯にわたって国民の安心や生活の安定を支える基盤であるとともに、格差の拡大や再生産等の社会課題に対処し、持続的な経済成長を実現するうえでも不可欠である。

これまでも少子高齢化に対応するために社会保障制度の見直しが行われてきたものの、今後の高齢者人口の増加、生産年齢人口の急減を控え、課題は多く残る。

そこで、わが国の社会保障制度のあるべき全体像について中長期の視点から検討すべく、4月に公表された新たな人口推計から確実に見える将来を受け止め、バックキャストするかたちで、課題と解決の方向性を取りまとめた。

■ 将来推計人口から見通した2045年の姿と、将来像の検討にあたり重要な視点

20年から45年にかけて総人口は減少し、特に生産年齢人口(15~64歳)の減少が顕著になる(図表参照)。一方で、高齢者の増加に伴い、医療・介護ニーズが増加し、社会保障給付費は、経済成長を上回るスピードで増加することが見込まれる。

こうした現状を踏まえると、将来像の検討にあたっては、(1)人口減少下でのサービス提供体制の整備(2)地域の実情に合わせた対応(3)サービスの担い手の確保とデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進(4)現役世代が急減するなかでの負担のあり方――が重要な視点となる。

■ 目指すべき姿と改革の方向性

医療については、機能分化が進み、効率的・効果的な医療提供体制が整備されていることが望ましい。そのために、入院について、高齢化に伴う地域の医療ニーズの変化に応じて病床機能の再編を進める一方、外来について、かかりつけ医機能を強化すべきである。

介護については、増加するニーズに対し、質を確保しつつ、限られた人材で対応できていることが望ましい。そのためには、事業所の協働化・大規模化を通じた効率化の徹底、介護ロボットの活用等、介護DXを通じた生産性の向上が不可欠である。加えて、高齢者の医療・介護の複合ニーズに対応するために、医療・介護情報の連携基盤の整備が急がれる。

また、現役世代が減少するなかでも必要な労働力を確保できるよう、被用者保険の適用拡大、第3号被保険者制度の見直し、働きやすい職場環境づくり等を通じて、女性や高齢者が活躍できる場の整備が必要である。

社会保障制度をどのように支えるかという負担の観点では、社会保険料だけでなく、税との一体的な枠組みにより、公正・公平・働き方に中立な制度を目指すべきである。そのためには、社会保険料とさまざまな税の組み合わせを検討するとともに、高齢者の負担のあり方についても、資産の保有状況を勘案するかたちへと見直すべきである。

■ 今後の政府議論への期待

こうした改革の実現に向けて、政府に対しては、全世代型社会保障に関する新しい将来見通し・グランドデザインの提示、人口減少下での労働力・担い手確保、税・社会保障の一体改革に取り組むよう求めている。

■ 企業の役割

45年を視野に経済界が果たすべき最も重要な役割は、積極的な国内設備投資・研究開発投資や、賃金引き上げを通じた経済全体の好循環の実現である。社会保障制度改革に関しては、担い手確保に向けたDXの推進、健康経営、働き方の推進と、事業を通じた地域社会への貢献である。

【経済政策本部】

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