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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年10月26日 No.3610 企業活動の活性化と地域活性化の関係を考える -地域経済活性化委員会企画部会

鎌倉氏

経団連は9月28日、東京・大手町の経団連会館で地域経済活性化委員会企画部会(徳川斉正部会長)を開催した。東京大学大学院総合文化研究科・同大学地域未来社会連携研究機構の鎌倉夏来准教授から、産業政策・産業立地政策の変遷を踏まえつつ、地域における企業活動の活性化に向けた今後の課題として、地域内・地域間連携と「近接性」について説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。

■ 産業政策・産業立地政策の変遷

産業政策は、情報の非対称性や外部性等から民間企業だけでは市場機能が効率的に働かないという「市場の失敗」に対する政府の介入の一つであるが、その定義は曖昧であり、時代によって変遷してきた。他方、産業立地政策は、産業の立地を「適切な」「望ましい」姿となるよう、空間的な配置を人為的に促すものである。特定の産業を対象とした産業政策とは、目的に共通点と相違点があることから、必ずしも一致するとは限らない。

地域経済活性化の観点から、産業立地政策の変遷を振り返ると、1990年代には、製造業の海外移転が進み、空洞化の防止や新成長分野の育成が重要となった。とりわけ空洞化防止策として既存の産業集積に対する関心が高まり、基盤となる集積や地場産業の振興が行われた。このため、70年代以降に進められた地方分散の促進や国土の均衡ある発展を目指した産業分散政策的な性質は弱まった。

また、2000年代に入ると、競争力のある産業・企業が核となって、地元の大学・研究機関等のシーズを活用して、当該産業企業の競争力の向上を図ることへと政策の重心が移り、各地で産業クラスター政策が展開された。これらの取り組みは、ネットワーク化による情報収集の効率化等、部分的な成果が得られたものの、政権交代に伴う事業仕分けによって後退した。

10年代後半以降には、それまでの自治体等に対する「面」的な支援から、地域の特性を活かした事業が生み出す経済的効果の最大化を目指す取り組みとして、支援対象業種を拡大し、地域経済を牽引する中核的な企業に着目した「点」的な支援が中心となり、現在に至っている。

■ 地域内・地域間連携と「近接性」

こうしたなか、地域における企業活動の活性化に向けた地域内・地域間連携のあり方について考えると、これまでの産業立地政策は、物理的な距離を基準に集積のメリットを活用するといった、地理的近接性を重視してきた面があるといえる。しかしながら、地理的近接性は万能ではなく、交流先が限定されるという面で、開放性が欠如しているというデメリットが指摘されている。今後の政策の方向性としては、共通の知識基盤、組織内の文化、社会的つながり、ルールや規範の類似性といった地理的な近接性以外の要素を考慮するなど、地理的な面を補完し得るバランスの取れた制度設計が、地域経済と企業活動の両方を活性化させていくうえで重要になると考えられる。

【産業政策本部】

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