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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年11月9日 No.3612 審議員懇談会を開催 -内閣官房の新原内閣審議官が講演/新しい資本主義の実現に向けた取り組みについて聴く

新原氏

経団連は10月11日、東京・大手町の経団連会館で審議員懇談会を開催した。十倉雅和会長、ならびに冨田哲郎審議員会議長をはじめ審議員ら約230人が参加。新しい資本主義実現本部事務局長代理を務める内閣官房の新原浩朗内閣審議官が「新しい資本主義の実現に向けて」と題して講演するとともに、意見交換を行った。講演の概要は次のとおり。

新しい資本主義をめぐる内外の有識者の議論や各種の研究は、ステークホルダー全体を考慮した企業統治を進め、スタートアップの振興と既存企業のオープンイノベーションに向けた環境整備の両面が重要であるということを科学的に裏付けている。こうした視点から、日本経済や企業が置かれている状況を整理したい。

まず、民間企業の研究開発投資額は、2008年から18年にかけて、ドイツでは1.35倍、米国では1.31倍に伸びているのに対し、日本では1.06倍にとどまっている。これは企業の問題ではなく、そもそも研究開発は外部性が大きく、私企業のみに任せると過少投資になりやすいという性質をもつことに起因するものである。研究開発投資の拡大に向けて、官民が連携して取り組んでいくことが重要といえる。

同様に、民間企業の設備投資額についても、名目値は20年以降伸びる傾向にあるものの、実質値の伸び率はさほど高い状況にない。足元では需給ギャップが縮小している状況にはあるが、より長期的な視点に立ち、日本の潜在成長率を高めていくため、必要な経済対策を実行しながら、民間企業による投資を促進していくことが求められる。

日本社会の大きな特徴として、諸外国と比較し、開業率・廃業率ともに低位で推移していることが挙げられる。企業の参入率・退出率の平均が高い国ほど、1人当たり経済成長率が高い傾向にあることを踏まえると、企業の新陳代謝を高めていくことが大切になる。この点、旧来技術と新技術の両方を用いる企業が持続的に存続し得ることが最近の実証研究からも明らかになってきており、イノベーションの観点から考えると、既存企業によるスタートアップ投資を引き続き伸ばしていくことが重要である。

足元の状況に目を転じると、23年4-6月期の実質雇用者報酬は前期比0.6%増と、7四半期ぶりのプラスの増加率となった。24年以降も、消費者物価の上昇に負けない名目雇用者報酬増が不可欠である。

中長期の視点でみると、日本の労働生産性は、G7諸国のなかで最も低い状況にあり、大きな課題といえる。労働移動が円滑である国ほど、生涯における賃金上昇率が高い傾向があることに鑑みると、日本も労働移動の円滑度を高めていくことが重要である。特に、労働移動の円滑度が高い国では、転職せずに同一企業内にとどまる労働者についても、生涯における賃金上昇率が高い傾向にある。日本企業と海外企業との賃金格差が大きいため、人手不足のなかで、日本企業から人材が奪われつつある状況にある。日本企業は、リスキリングを推進するとともに、求められるスキルに応じて賃金に適切な差をつけるなど、個々の企業の実態に応じながら、年功賃金がベースとなる雇用制度の見直しを進めていくことが必要である。

【総務本部】

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