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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年11月16日 No.3613 サステナビリティ報告・非財務情報開示をめぐる動向と展望 -ファン・デル・エンデンGRI事務局長と懇談

経団連とその関連団体である企業市民協議会(CBCC、西澤敬二会長)は10月17日、Global Reporting Initiative(GRI)のエルコ・ファン・デル・エンデン事務局長の来日の機会をとらえ、東京・大手町の経団連会館で懇談会を開催した。

非財務情報の開示基準に関する国際的な調和に向けて、主要な基準策定団体の統合や連携の取り組みが加速していることを踏まえ、ファン・デル・エンデン氏から、サステナビリティ報告・非財務情報開示をめぐる国際的な動向と展望について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ GRIスタンダード

投資家をはじめ多様なステークホルダーが、仮定ではなく事実に基づいて意思決定を行えるよう、GRIはサステナビリティに対する企業の取り組みを比較可能な方法で開示する手段として、「GRIスタンダード」を無償で提供している。これは任意基準でありながら、サステナビリティ報告において世界の大手企業および日本企業の約8割で利用されているなど、外部保証として高く評価されている。

■ ISSBとの協調

世界中で400以上の非財務情報開示に関するフレームワーク・基準が乱立する「アルファベットスープ」現象が生じている。そのため、投資家にとってはデータの比較が非常に面倒な状況に陥っているほか、格付け機関のやや不透明な評価手法により、非財務情報開示にあたって企業に過大な負担が強いられている。

したがって、GRIと国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は、サステナビリティ報告において双方の基準をベースとした包括的なグローバル・ベースラインの設定とそれをすべての格付け機関の方法論に反映させていく必要があると考えている。

マテリアリティ(優先課題)に関して、世間ではかなり誤解を招くような議論が繰り広げられている。しかし、(1)ISSBが採用した「アウトサイド・イン・アプローチ」による財務的マテリアリティ(サステナビリティ課題が企業の収益性に及ぼす影響)(2)GRIが採用した「インサイド・アウト・アプローチ」によるインパクト・マテリアリティ(企業行動が環境・社会・経済に与える影響)――という整理が望ましい。すなわち、GRIスタンダードは長期的なリスク管理に対応している。

GRIとISSBは完全に協調・補完関係にあり、2022年3月には基準策定における協働に関する覚書(MOU)を締結した。両者の法的枠組みを踏まえると、今のところ基準の統合は困難であるが、システムの構築において今後ますます緊密に協力していく。11月20日には、両者のイニシアティブによる「サステナビリティ・イノベーション・ラボ」をシンガポールに開設予定であり、同ラボの支部を日本とタイに置く計画である。

■ EUとの協働

あわせて、GRIは欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)によるインパクトに関する協働作業にも大いに貢献している。GRIスタンダードには欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)との極めて高い相互運用性が担保されており、報告をできるだけ容易にする目的で、GRIとEUはデジタルタクソノミーの推進に共同で取り組んでいる。また、EUは、今後、GRIのセクター別基準策定の動きと連動しつつ、金融サービス部門を手始めに、ESRSのセクター別基準の草案作成に着手する見込みである。

【SDGs本部】

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