1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2023年11月30日 No.3615
  5. OECD、BIACと国際課税に関する会議を開催

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年11月30日 No.3615 OECD、BIACと国際課税に関する会議を開催 -市場国への新たな課税権の配分、最低税率課税等の諸課題を議論

コーウィン氏

経団連(十倉雅和会長)の税制委員会(宮永俊一委員長、柿木厚司委員長)と21世紀政策研究所(十倉雅和会長)は11月9日、経済協力開発機構(OECD)およびOECDに対する民間経済界の諮問機関であるBusiness at OECD(BIAC)と国際課税に関する会議を東京・大手町の経団連会館で開催した。同会議は、OECD・G20によるBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクト開始を契機として2015年以来毎年開催しており、今回で9回目となる。

23年4月に新しく就任したOECDのマナル・コーウィン租税政策・税務行政センター局長、青山慶二21世紀政策研究所研究主幹、細田修一財務省主税局国際租税総括官をはじめ、内外の多国籍企業関係者を登壇者に迎えた。会員企業から約140人が参加し、コーウィン氏の基調講演、市場国への新たな課税権の配分(第1の柱)および最低税率課税(第2の柱)に関するパネルディスカッションを行った。

OECD・G20はこれまで、経済のデジタル化に対応した新たな国際課税ルールづくりを進めてきた。同ルールは、市場国への新たな課税権の配分等を扱う第1の柱利益Aと、基礎的なマーケティング・販売活動に対する移転価格税制の執行にかかる簡素化・合理化を目的とする第1の柱利益B、国際的に統一の最低税率(15%)を設定する第2の柱から構成される。OECDは、23年7月に包摂的枠組み加盟138カ国の合意により、第1、第2の柱の進捗を踏まえた「成果声明」を公表している。また、同年10月には利益Aの多国間協定(MLC)の条文案がOECDから公表されている。

基調講演でコーウィン氏は、OECDの包摂的枠組みの概要、ならびに同枠組みにおけるBEPSプロジェクトの成果や、経済のデジタル化に伴う課税上の課題の検討状況について解説した。これらのプロジェクトを円滑に実施すべく、OECDとしても途上国への技術的支援や税務行政の能力向上に取り組んでいると述べた。また、第1、第2の柱以外の課題として、税と環境、税の安定性、税務行政のデジタル化等についてOECDで検討していると説明した。

第1の柱に関するセッションでは、OECDが、利益Aのこれまでの検討の経緯や、最新のMLC案における利益Aの構成要素やその概要、また、利益Bについて7月に実施したパブリックコンサルテーションで提出された意見の概要や24年1月の期限に向けて作業を進めていることなどについて説明した。これに対して、日本企業からは、利益Aについて二重課税の排除やレベニュー・ソーシング・ルール(収入がどの市場国由来かを決定するルール)の簡素化、税の支払い等に関するルールについて、実務の観点から意見が出された。利益Bについても、その対象範囲や適用のあり方、日本企業の海外進出への影響等について指摘があった。

第2の柱に関するセッションでは、OECDから、15%の最低税率課税の進展の状況として、実施ガイダンスやグローバル・ミニマム課税(GloBE)情報申告書にかかる文書等を公表したことなどの説明があった。そのうえで、現在進行中の作業として、恒久的セーフハーバーの仕組み等を検討しているとのことであった。これに対して、日本企業からは、企業の実務負担を軽減する観点から、恒久的なセーフハーバーの導入に関する意見や、適格国内最低税率課税(QDMTT)およびQDMTTに関するセーフハーバーにかかる意見が出された。

◇◇◇

経団連は、今後のOECDでの議論や第1の柱および第2の柱などの国内法制化に際し、日本企業の問題意識や要望が十分に反映されるよう、引き続きBIACとの連携も図りつつ、OECDおよび日本の財務省などとの対話を継続・強化していく。

【経済基盤本部】

「2023年11月30日 No.3615」一覧はこちら