1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2023年12月21日 No.3618
  5. 現代日本の圏域形成・広域連携のあり方

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年12月21日 No.3618 現代日本の圏域形成・広域連携のあり方 -地域経済活性化委員会企画部会

瀬田氏

経団連は11月22日、東京・大手町の経団連会館で地域経済活性化委員会企画部会(徳川斉正部会長)を開催した。わが国において企業活動の効率化および円滑化を図るうえで望ましい圏域形成・広域連携のあり方について、東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻の瀬田史彦准教授から、説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 参加するすべての主体の合意が必要な圏域形成・広域連携

一定の地理的範囲としての圏域は、一つの市町村や都道府県等の行政区以外に、行政区同士が連携して広域的な公共サービスを提供する際に形成されることもある。自治体による広域連携のメリットとして、単一自治体の場合よりも、規模の経済が働いて固定費等が低減し、効率的にサービスを提供できることが挙げられる。

他方で、自治体同士の圏域形成・広域連携の調整は容易ではない。例えば、全国の多くの広域連合では、これまで国による広域連携推進策を活用し、自発的に連携が進んできた。しかし、広域的なサービスの代表例といえる路線バスといった地域交通では、メリットのある市町村のみが費用を負担し、圏域全体でみれば必ずしも最適な連携体制とはなっていない。

また、大規模な商業施設を都市計画区域内に誘致しようとしても、隣接する中核的な自治体が、自らの自治体内に立地している商業施設の空洞化を懸念して反対し、調整が進まなかった事例もみられる。こうした場合、都道府県の介入が必要となるが、必ずしも実効性はないとの指摘もある。

以上の事例を踏まえると、現代の圏域形成・広域連携は、すべての主体がメリットを得られなければ成立せず、地方分権の進展と相まって、全体最適のみを前提とした連携が困難な状況となっている。

■ 重層的な圏域形成・広域連携の必要性

こうしたなかで、国が最適な圏域の形成を試みても、一部の事業や部門ごとには可能だが、統一的な基準を設定することは難しい。

2023年7月に策定された新たな国土形成計画(全国計画)では、暮らしに必要なサービスが持続的に提供される「地域生活圏」という概念が提唱され、概ね10万人以上の人口を目安として圏域の形成を目指している。圏域の規模の水準を国が示すことは必要である。他方デジタル化の進展により、サービス提供のあり方が変化しているなかでは、自治体においても、地域の特性を踏まえて事業や部門ごとに多様な連携を行い、重層的な圏域形成・広域連携を形成していくことが理想である。

なお、昨今の人口減少のスピードに比べて、広域連携の形成は明らかに遅れており、早晩、公共サービスを十分に提供できない圏域も出てくるおそれがある。そうした状況となれば、新たに市町村合併等が議論される可能性があるが、政治的なハードルは依然高いだろう。

【産業政策本部】

「2023年12月21日 No.3618」一覧はこちら