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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2024年3月28日 No.3631 提言「複雑さを増す世界におけるOECDへの期待」を公表 -上川外相に建議

上川大臣(左)と稲垣委員長

OECDに加盟して60周年にあたる2024年、わが国は10年ぶりにOECD閣僚理事会の議長国を務め、各種の議論をリードする。この機会をとらえ、経団連(十倉雅和会長)は3月19日、「複雑さを増す世界におけるOECDへの期待~わが国のOECD加盟60周年にあたって」を公表した。提言の概要は次のとおり。

■ OECDに期待される役割

国際的な緊張が増すなか貿易投資にさまざまな制約が課され、気候変動対策に関連して内外差別的な措置がみられ、域内の格差拡大の原因としてグローバル化の弊害が殊更に強調されるなかでも、企業はグローバルに活動を続け、越境データ流通量は増加するなど、世界は複雑さを増している。

このような複雑な世界のなかでは、第一に、複雑な状況の実態をできる限り正確に把握し、問題の所在を可視化することが求められる。この点、OECDは、各国からデータを収集し国際比較を可能にするのみならず、付加価値貿易統計(TiVA)の活用や市場歪曲的な補助金の実態把握等、さまざまな分野でエビデンスの収集・分析・提供を行っている。

第二に、課題に対し最適な政策を選択することが求められる。OECDのモデル分析を通じた影響評価や、「炭素削減アプローチに関する包摂的フォーラム」(IFCMA)のような場を通じたベストプラクティスの共有等は、各国のより良い政策選択に貢献することが期待される。

第三に、国際的な課題に関しては、各国・地域間の協調を促し、規範・ルールを策定することが求められる。特に国際課税やAI、信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)などの新たな分野で、OECDが国際ルールの形成を主導することへの期待は大きい。また、ルールの実効性確保に向け、OECD非加盟国にOECDルールの採用を訴えることが重要である。その際にはキャパシティ・ビルディング等の支援策をあわせて講じることが求められる。

■ OECDの組織・運営のあり方

OECD加盟国の拡大に関しては、拡大が目的化することのないよう、OECDの各種ルールを受け入れる意思と能力を候補国に対し十分に確認する必要がある。また、OECDの取り組みを現実の経済問題の課題の解決に資するものとするために、各国の経済界代表によって構成されているBIAC(Business at OECD)の意見を重視すべきである。さらに、分野横断的な課題への対応力を高めるための委員会間の連携促進や、G7・G20との連携強化、広報機能の拡充なども求められる。

あわせてわが国には、ルール形成への積極的な関与、米欧の橋渡し、アジアの視点の反映などに取り組むことが期待される。

◇◇◇

15日、稲垣精二OECD諮問委員長らが上川陽子外務大臣を訪問し、同提言を建議した。上川大臣は「経済外交の新たなフロンティアの開拓において官民連携は重要であり、いただいた提言を最大限活用したい」「OECDは豊富なデータや客観的な分析に基づき、各国の政策形成に貢献できる貴重な機関である。こうした強みを生かし、日本としてルールに基づく自由で公正な経済秩序の維持・拡大に貢献できるよう、OECDでの議論を主導したい」と発言した。

【国際経済本部】

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