経団連と内閣府は3月6日、「女性登用をより一層加速化するために、企業に求められていること~経営の視点から見る我が国の女性リーダーの登用」をテーマに、ダイバーシティ・マネジメントセミナーをオンラインで共催した。全国から1000人に迫る参加申し込みがあった。
経団連副会長でアサヒグループホールディングスの小路明善会長による基調講演の後、SWCCの長谷川隆代社長、東京都立大学大学院経営学研究科の松田千恵子教授が、経営の視点から見るダイバーシティの重要性について講演した。概要は次のとおり。
■ 基調講演「DE&Iへの想いと取り組み」(小路氏)
アサヒグループにとってDE&I(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)は、組織と人のケイパビリティを強固にする形としての投資であり、そこから多様なイノベーションが生まれる。組織のなかで多文化と異文化への理解を促し、そのインクルージョンを高める集団を形成し、企業文化として創り上げていくことが、経営トップの重要な役割であると定めている。2030年までに女性経営者比率を40%にすることをKPI(重要業績評価指標)としているが、数値目標を達成することが目的ではない。登用された女性自らが活躍していることを実感することや、その活躍が会社の成長に結びつくことが重要である。
すでに部門のトップや関連会社の社長に就いている女性は複数いる。どんな仕事でも臨機応変に対応する汎用的能力や、物事を客観的に見て冷静な判断ができるメタ認知能力が非常に高いことが共通していると感じる。こうした能力を持つ人材を育成していき、経営トップが数値目標設定と女性の経営層登用を主導することが、ひいては、特定のジェンダーにとらわれず、多様なタレントを持つ後継者の持続的な育成とロールモデル育成につながると考える。
■ 講演(1)「異なる視点がつくる新たな可能性~SWCC(旧昭和電線)のD&I推進」(長谷川氏)
18年にSWCC初の女性として「異質な」社長に就任してから、これまでと全く違う考え方を持ち、全く違うガバナンスによる非連続な改革を行ってきた。そうした結果、財務体質改善や株価向上などの成果につながった。その背景には多くの本音のぶつかり合いがあった。ジェンダーを問わず、安心感を持って多様な意見を正直にぶつけ合えて初めて、D&Iが経営において力を発揮することに気付いた。
会社のさらなる成長のためには、男性中心の職場にはなかった「真っ当でわきまえない意見」が欠かせない。社長直轄のダイバーシティ推進プロジェクト「SWCCarat」等を通じて、経営陣に対して出された提案をなるべく受け入れ、対話を絶やすことなく意見を傾聴しながら、D&Iの力を有効に使い、これからも変革を進めたい。
■ 講演(2)「コーポレートガバナンスの視点から見るダイバーシティへの取組~現状と将来」(松田氏)
日本型経営システムからの脱却が求められている今、女性に限らずマイノリティの方々は大きなチャンスを迎えている。なぜならジェンダーなどに拘らず、いかにプロフェッショナルであるかで評価される時代になってきているからだ。多様性にも、ジェンダーや国籍等のデモグラフィー型多様性と、その人が持っているキャリアや経験、知見等を切り口としたタスク型多様性がある。後者の多様性が高まるほど企業の業績が上がるとの研究結果もある。ダイバーシティの推進のためには、タスクの明確化やプロフェッショナル化が欠かせない。企業にはこうした視点で人事政策の変更や見直しに取り組んでもらいたい。
【ソーシャル・コミュニケーション本部】