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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2024年7月11日 No.3644 「グローバルな市場を切り拓く~経営者のための国際標準戦略トップセミナー」を開催<上>

経団連(十倉雅和会長)は6月7日、東京・大手町の経団連会館で「グローバルな市場を切り拓く~経営者のための国際標準戦略トップセミナー」を開催し、約200人が参加した。今号と次号の2回にわたり、各登壇者の講演の概要、パネル討議の模様を紹介する。

セミナー前半では、時田隆仁審議員会副議長/知的財産・国際標準戦略委員長の開会あいさつ、津賀一宏副会長・同委員長による提言の説明のほか、来賓あいさつや基調講演を実施した。概要は次のとおり。

■ 国際標準戦略の重要性
(甘利明衆議院議員・自由民主党知的財産戦略調査会顧問)

日本において国際標準に対する考えは、国際標準に「合わせる」である。一方で先進国・国際社会における国際標準に対する考えは、国際標準を「つくる」である。この受動的活動と能動的活動の違いが「技術で勝ってビジネスで負ける」状況の原因となっている。

政治家は手をこまねいていたわけではない。私は20年前に、日本の技術を国際標準とするために政府は戦略的に外交を展開すべきと主張し、自民党に知的財産戦略調査会を設置したほか、経済産業大臣として国際標準に関する政策を主導した。

これまで国際標準は経済合理性や国民の安心・安全と関連して語られることが多かった。しかし近年、国際標準を語るうえで重要な視点は経済安全保障であり、基本的な価値観を共有するチームで国際標準をつくることが肝要である。

■ ビジネスにおける標準化の価値
(江藤学一橋大学イノベーション研究センター特任教授)

標準化とは、規格(自作ルール)を普及し、ユーザーを増やすことで強制力を高め、標準(普及した規格)にする活動である。一番育てるべきはビジネスでどのようにルールを使うかを考える人材である。各社は積極的に育成してほしい。

標準化においてはリーダーシップが最重要であり、リーダーシップなくして標準化はうまくいかない。自分こそがルールをつくる、と思うべきである。

適合性評価においては、各ステークホルダーの役割を決め、全体のバランスを調整する存在であるスキームオーナーの働きが肝要であるが、日本には十分な能力を持つスキームオーナーがおらず、適合性評価において後進国となっている。標準をつくるだけではなく適合性評価が重要であることを認識すべきである。

■ 国際標準戦略~日本ブランドの再構築
(澤田純日本電信電話会長)

電気通信の本質は「つなぐ」ということである。つなぐためには共通のルール(国際標準)が必要で、本質的に競争と協調という二つの側面を包含している。標準化には技術が主導するデファクトと、社会システムが主導するデジュールという二つの方向性がある。技術革新と社会システムが相互に影響を与えるなかで条件適合に基づき標準化戦略を考えていくべきである。

2040年の世界について考えると、米国的かつ中国的、さらにはグローバルサウスと呼ばれる国々も台頭する世界、つまりパラコンシステント(同時並列)な世界になるのではないか。

そこで23年に立ち上げた京都哲学研究所では、西洋と東洋の考え方が両立する「価値多層社会」の実現に向けて国際的なモメンタムの形成を目指し、新しい社会インフラが登場するなかで人々はどういう価値観を持つべきか議論している。

日本には独自の良い考えがあるものの、言語化や世界への発信ができていない。世界が受容できる概念や方式にして、新しい社会システムを提案することが、日本ブランドの再構築につながる。それに加え、技術を持って条件適合戦略に基づいて国際標準化を図ることが重要である。

【産業技術本部】

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