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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年6月12日 No.3686 災害復興特別委員会が三陸の震災・林野火災の被災地を訪問

旧気仙沼向洋高校校舎

献花する冨田審議員会議長

経団連(筒井義信会長)の災害復興特別委員会(十倉雅和委員長〈当時〉、冨田哲郎委員長)は、東日本大震災の被災地の現状と課題を把握するため、継続的に被災地を視察している。2025年度は5月22日から23日にかけて、冨田審議員会議長・同委員長、永野毅副会長はじめ同委員会や危機管理・社会基盤強化委員会の幹部らが宮城県気仙沼市、岩手県陸前高田市、25年2~4月に大規模林野火災にも見舞われた岩手県大船渡市を訪問した。

■ 気仙沼市

気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館(旧気仙沼向洋高校)では、校舎の3階にまで津波で流されてきた車の様子などを視察した。菅原茂気仙沼市長の案内のもと、震災の激甚さを学ぶとともに、「津波死ゼロ」を目指して取り組んできた同市の防災や復興の歩みを把握した。

その後の懇談会で菅原市長は、震災を知らない中高生が語り部活動に参加し、伝承を受け継ぎながら、彼らのコミュニケーション力やプレゼンテーション力の向上に役立っていること、同市の人口減少対策は「市民の暮らしやすさ(ウェルビーイング)の実現」が本質と捉え、ジェンダーギャップ解消プロジェクトや持続可能な社会の推進などに取り組んでいることを説明した。

■ 陸前高田市

陸前高田市では、東日本大震災津波伝承館(いわてTSUNAMIメモリアル)、最高12.5メートルの二重の防潮堤や奇跡の一本松など震災遺構がある高田松原津波復興祈念公園、高台造成地に市役所や博物館などを集積したコンパクトシティを訪問した。3607世帯の被災者のうち、高台地区内に土地を取得したのは735世帯にとどまり、別の地区に移住した世帯も多い。そこで、新規の移住者も歓迎していると説明があった。佐々木拓陸前高田市長は、「今後は、心の復興や地域文化の再生が重要な課題」とし、地域の魅力の発信に注力することを訴えた。サケの養殖が進んでいることや、BRT(Bus Rapid Transit)(注)をきっかけに未来のモビリティの実験場にしたいとの考えも示された。

高田松原津波復興祈念公園内の国営追悼・祈念施設では、冨田審議員会議長が献花を行った。

■ 大船渡市

大船渡市役所では、渕上清同市長らから、林野火災における被害状況、復旧・復興に向けた取り組み・課題などについて説明を聴いた。

延焼範囲約3370ヘクタール、死者1人、最大避難者数4310人、家屋等の被害は226棟に及んだ。農林水産業、商工・観光業に影響が出ている。震災の記憶の新しいうちに起こった災害であったために避難指示への対応が円滑であった一方で、震災に続いて火災で再び住宅を失った方もいる。その他、災害義援金の1次配分が終わり、仮設住宅への入居も始まって避難所は解消に向かっているが、仮設住宅入居後も孤立させないような継続的な支援が必要であること、保管施設・漁網や養鶏場の鶏などを失った産業への支援も必要であることなどの説明があった。

大船渡魚市場では、入船・入荷予定、魚の計量結果、入札や入札結果まで全てデジタル化され、効率化、衛生・鮮度管理が充実・強化された魚市場の運営を視察し、説明を聴いた。

魚市場からはBRTで盛駅へ移動。盛駅はBRTと鉄道がシームレスにつながっており、そこから釜石駅まで三陸鉄道震災学習列車に乗車した。林野火災のあった綾里地区や震災の被災地域を視察しつつ、三陸鉄道の石川義晃社長らから、同鉄道の被災体験、その後の教訓を生かした訓練などについて説明を聴いた。

◇◇◇

経団連では、今後も東北や能登をはじめ被災地の復旧・復興に向けた取り組みを支援するとともに、激甚化・頻発化が想定される災害に備え、防災庁の設置など、防災、復旧・復興に向けた政策への提言や事業継続計画の浸透などの活動を展開していく。

(注)バス輸送の柔軟性と鉄道の高速・高頻度運行を組み合わせた公共のバス交通システム

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

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