経団連(筒井義信会長)は9月2日、東京・大手町の経団連会館で「科学技術立国シンポジウム」を開催した。
小林茂樹文部科学副大臣(当時)、2025年にノーベル化学賞を受賞した北川進京都大学理事・副学長(当時)らが登壇した。
5月に経団連が公表した提言「科学技術立国戦略」を踏まえ、人づくり、産学融合、社会実装・市場創出をテーマにパネル討議も実施し、科学技術を国力の源泉とする方策を議論した。
■ 科学技術を国力に
筒井会長は、人口減少や資源制約、安全保障上の懸念に加え、AIをはじめとする先端技術や高度人材を巡る国際競争が激化していると指摘。研究開発投資を起点として成長と分配の好循環を生み出し、「世界から信頼され、必要とされる国」を目指す必要があると述べた。
産業界も研究開発投資を拡大し、人と知の循環、社会実装、市場創出を進める考えを示した。
小林副大臣は松本洋平文科大臣(当時)からの祝辞を代読。経団連の科学技術立国戦略は、政府の目指す方向性と軌を一にすると評価した。
第7期科学技術・イノベーション基本計画では、人材育成や基礎研究力の強化を含めた「科学の再興」を重要な柱とし、令和9年度予算の概算要求で約8兆8000億円を計上。科学研究費助成事業(科研費)の予算の大幅拡充、研究大学群の形成、「AI for Science」、宇宙、フュージョン(核融合)エネルギーなどへの支援を進める方針を示した。
■ 「無用の用」を力に
基調講演で北川氏は、有機金属構造体(MOF)の研究を例に、一見役に立たないようなものにこそ大きな価値が宿るという「無用の用」の重要性を強調。ノーベル賞受賞研究をはじめとする基礎研究は、成果が結実するまでに数十年を要することも多いとして、短期的な成果のみで評価せず、「余白」を許容し、柔軟で長期的な支えが必要と訴えた。
これまで環境負荷をかけながら、偏在する地下資源を採掘、燃焼し、大気中へ排出してきた「採掘文明」から、空気や水を資源として利用し、分離・変換・循環させる「分離文明」への転換も提唱した。
MOFはガスの分離・貯蔵、冷却、電池、医療など幅広い分野で社会実装が進んでいるとし、日本が競争力を確保するには、基礎研究の自由を守りつつ、有望な技術を見いだし、規制改革や市場形成まで一気通貫でつなぐ産学官のエコシステムが重要と指摘した。
■ 人と知を循環
パネル討議では、岡田光信アストロスケールホールディングス社長兼CEO、井上諭一内閣府科学技術・イノベーション推進事務局長、澤田純経団連副会長、中島さち子steAm代表が、「人づくり」「産学融合」「社会実装・市場創出」をテーマに意見を交わした。
AI時代にあって、好奇心や五感、問いを立てる力が一層不可欠となることや、産学間における博士人材や研究者の循環、異分野の人材が交わる場づくりの重要性を共有した。
技術を社会実装し、世界市場につなげるには、企業自らが市場開拓や標準化などのルール形成に果敢に取り組むとともに、政府調達、規制改革、スタートアップ支援などを組み合わせる必要があるとの指摘もあった。
◇◇◇
経団連は引き続き、科学技術立国の実現に向け、産学官の連携を深め、科学技術を起点とする持続的な成長につなげていく。
【産業技術本部】
