[ 目次 | 概要 | 本文 | 別紙 ]
[ 土地・住宅 | 電気通信 | 流通 | 農業 | 運輸 | エネルギー | 環境・廃棄物 | 保安・安全 | 社会保障制度 | 経済法規 ]
21世紀に向け新しい規制緩和推進体制の整備を望む
〔別 紙〕

分野別の規制緩和の課題

1.土地・住宅分野


  1. 工業(場)等制限法の緩和、不動産特定共同事業法の緩和など低未利用地の活用や土地の有効利用を促進する規制緩和
  2. 大都市中心部には、バブルの爪痕ともいうべき虫喰空閑土地が点在しており、これら未利用土地資源の有効活用は、喫緊の課題である。政府は、今年3月、土地の集約化手法の充実、都市基盤の推進など都心居住の推進のための施策や、担保土地の有効利用策を発表したが、これらの施策を着実に実行し、土地の整形化、集約化を促進する必要がある。今後、証券化等により担保不動産に関する権利の流動化を促進するにあたっては、一般不動産へも適用できる仕組みとすべきである。
    土地の有効利用に資する手段として、複数の投資家が共同で不動産に投資し、その事業収益を分配する不動産特定共同事業は効果的であり、投資持分の譲渡制限の撤廃、最低出資単位に関する制限の廃止を行ない、より一層の活用を図るべきである。
    大都市圏には、既に一定規模をもった低未利用地も多く残されている。大都市中心部への産業・人口の過度の集中を防止することを目的とし、工場や大学の新増設を制限する工業(場)等制限法は、制定から30年以上が過ぎ、立法の前提が変化している。今や大都市圏では人口や生産機能の空洞化が懸念されており、工業(場)等制限区域の抜本的な見直し、基準面積の引き上げを早急に進めるべきである。また、工場立地法で要求する環境施設面積や緑地面積について、立地状況、屋上庭園や垣根などの整備状況に応じて弾力的な算定を認めるべきである。
    工場跡地などの有効利用が制限されている臨港地区については、弾力的な指定・変更および地域内の開発に関する用途転換の迅速化・円滑化を一層進めることが重要である。

  3. 容積率規制、日影規制の緩和など都市再開発を促す規制の合理化
  4. 土地の高度利用や防災面、環境面の課題に対応した適切な土地利用を実現するため、既成市街地の再生・再構築を推進することが重要である。
    都市再開発や区画整理事業を推進するにあたっては、容積率、高さ規制の緩和など、思い切ったインセンティブを与える必要がある。さる6月に都市計画法、建築基準法を改正し、創設された「高層住居誘導地区」制度は、容積率の緩和、日影規制の適用除外、斜線制限等の緩和などを組み合わせた総合的な制度として評価できる。しかし、都市の再開発、まちづくりに向けた既存のさまざまなインセンティブ制度については、指定容積率を引き上げても、日影規制など他の規制との関係で容積率を十分に使い切れないなど、その本来の趣旨が活かされにくい規制も散見され、合理化が求められる。
    具体的には、公開空地を設けることなどにより容積率・高さ制限・斜線制限の緩和を行なう「総合設計制度」を活用する際に、近隣同意要件が求められる場合があるが、このような運用を廃止するとともに、日影規制を緩和すべきである。
    また、敷地境界から一定距離の後退を前提とすれば、建てづまり感の解消という目的は達成されることを考慮し、隣地斜線制限、道路斜線制限の緩和を行なうべきである。さらに、都市再開発に向けたこれら規制緩和措置を一体的、総合的に活用できるようにすべきである。
    その上で、まちづくりをする側が分かりやすく使いやすいように、各種インセンティブ制度を整理統合することが必要である。こうした措置は、地域コミュニティの崩壊を引き起こしている商店街など中心市街地の再活性化にも資すると考える。
    一方、マンション、ビルディングの中には老朽化し、建て替えの時期を迎えているものが多くあり、これらの建て替えを契機に都市の再生を図ることが求められている。マンションの建て替えを円滑に進めるためには、合意形成に係る法制、税制上の仕組みづくりが必要である。
    また市街地再開発事業の初期段階から民間企業の事業ノウハウを一層活用できる環境を整備するとともに、土地所有者や事業者などの土地活用への意欲を引き出すよう、都市再開発法における権利変換計画を定める際には、全員同意によらずとも柔軟に計画を定めることを認めるべきである。

  5. 過大な開発負担を求める開発指導要綱の是正
  6. 地方自治体は、開発指導要綱に基づき民間事業者に対し過大な開発負担を求めているが、それが結果的に住宅・宅地の供給を妨げるばかりか、事業コストを高め、住宅分譲価格の上昇を招いている。
    地方分権の進展により、土地に係る権限も地方自治体に移譲されていくが、それに伴い行政責任はますます重いものとなる。一部の地方自治体では指導内容の見直しを進めているが、依然として指導要綱改善の余地は大きい。各自治体は、国の土地政策が地価抑制から土地の有効利用へと転換した趣旨を踏まえ、行き過ぎた開発指導要綱(負担金の拠出、公園・教育機関用地の提供、緑地の確保、住宅付置義務、人口規制等)の是正を徹底すべきである。
    また、政府は、各自治体の施策に国の土地政策を迅速かつ具体的に反映させるよう求めるとともに、各自治体の開発指導要綱の見直し状況について引き続き調査を行ない、行き過ぎた指導の是正を求めるとともに、関連公共施設の整備における官民の負担ルールを明確化すべきである。

  7. 新技術の導入を円滑にする建築基準法体系の国際的整合化
  8. 建築コストの引き下げに向けた取り組みとしては、既に『住宅建設コスト低減のための緊急重点計画』が実施され、建築基準に係る相互認証および規格・基準の国際的整合化など住宅の輸入、海外資材・部品の導入の円滑化が進められており、この方向性は評価できる。今後は、日米新協議に前向きに対応し、一層の相互認証の促進などを行なうとともに、国際的な基準の整合化を促進すべきである。
    とりわけ、防火関連の建築規制については、中から燃え広がらない構造を求める欧米と外から燃え移らない構造を求める日本との防火思想の違いもあって、海外から「障壁」と指摘されているが、屋根、外壁開口部の構造規定の見直し、耐火構造の指定における類似素材の指定手続の簡素化や一定の防火要件を備えた住宅のダクトや配管の不燃材基準の緩和などを行なう必要がある。既に検討が進められている、木造3階建て共同住宅の準防火地域での建設を可能にする措置も早急に実施に移すべきである。
    また、今年3月の建築審議会答申を受けて、性能規定化を中心とする建築基準法の改正が次期通常国会への改正法案提出を目途に検討されており、その結果が期待される。性能規定化を行なうにあたっては、法の趣旨に適う新技術が円滑に導入できるよう、新技術の認定の仕組みをビルトインした制度を構築すべきである。

  9. 土地取引届出制度の事後報告制度への移行
  10. 国土利用計画法に基づく土地取引届出制度は、一定規模以上の土地取引の利用目的ならびに価格に対して、事前に審査を行なうものであるが、取引の抑制に結びついており、基本的に事後報告制度に改めるべきである。


日本語のホームページへ