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21世紀に向け新しい規制緩和推進体制の整備を望む
〔別 紙〕

分野別の規制緩和の課題

5.運輸分野


  1. 車検制度の見直しをはじめとした道路輸送の効率化に資する規制緩和の推進
    1. トラック輸送は、わが国の貨物輸送分担率の50%を超えるシェアを保持しており、その事業効率化は、わが国全体の物流効率化に大きく貢献するものと考えられる。トラック事業については、物流二法の成立などにより、事業者の自由な事業活動を促す方向で関連規制の緩和が進められてきており、新規参入者もこのところ増加する傾向にある。しかし、トラック事業は極めて労働集約的な産業であり、今後の高齢化・少子化といった社会構造の変化に大きく影響を受けることも予想される。こうした状況のなかで、トラック事業者が物流コストの低減という経済的要請に応えるためには、事業者のコスト低減に資する規制緩和を進める必要がある。

    2. トラック等営業用車両には整備管理者の選任が義務づけられており、自家用乗用車以上に日常の車両管理が十分に行われている。物流コストの低減を促す観点から、トラック等営業用車両について、97年3月の規制緩和推進計画の再改定に示されているように、本年度中に集中的に調査を実施し、車検期間の2年程度への延長を実現すべきである。
      併せて、レンタカーについては車検期間を自家用乗用車並みにするとともに、自家用乗用車についても、ユーザー負担の軽減を図る観点から、車検期間の延長について引き続き検討すべきである。

    3. また、個々のユーザーニーズに応じた点検整備のあり方という観点から、現状の検査内容を見直し、予防的観点の項目を取り入れた検査を確立したうえで、点検整備をユーザーの自己責任に委ねるべきである。

    4. 加えて、運行効率の向上により環境対策や交通渋滞の緩和といった社会的要請に応える観点からも、運転免許制度や駆動軸の軸重制限値の見直し、積載条件・通行条件の緩和などを推進すべきである。

  2. 港湾運送事業に係る規制の見直し
    1. 97年4月に総合物流施策大綱が閣議決定され、物流に関する総合的な取組みが行われることになったが、物流効率化のためにはモード間の有機的な連携が重要であり、陸上輸送と海上輸送の結節点である港湾の重要性は極めて高い。また、内航海運へのモーダルシフトを促す観点からも、利便性の高い港湾が求められている。さらに近年、アジア近隣諸国において利用コストが低廉で大型の施設を有する港湾の整備が進められており、わが国港湾の国際競争力の低下が現実のものとなりつつある。
      このような中で港湾の利便性を向上させ国際競争力を強化するためには、まず港湾機能の重点的な整備が必要であるが、ソフト面の対応として港湾の利用料金の見直しやEDI化の推進、水先、夜間入港などの面での規制緩和等により港湾利用の効率化を促すとともに、港湾運送事業の近代化、活性化を図ることが重要である。

    2. 港湾運送事業においては、参入規制、価格規制によって事業者間での競争が制限されており、事業者の柔軟な対応や事業の効率化が妨げられているとの指摘がある。市場原理の導入により事業者の創意工夫を促し港湾運送事業の活性化を図る観点から、港湾運送事業の運営安定化に配慮しつつ、参入規制と価格規制を見直していく必要がある。

    3. 参入規制については、運輸分野における需給調整規制廃止という政府の基本方針を踏まえ、需給調整に基づく免許制を見直し、設備、従業員等定められた条件を満たせば参入できるようにすべきである。また、事業者の柔軟な対応を可能とする観点から、港湾ごとの免許や利用者、取扱貨物等の限定による細分化された免許のあり方を見直す必要がある。
      運賃・料金については認可制となっており港類別に一律に設定されているが、多様な荷主ニーズに対する機動的な対応を可能とする観点から、より弾力的な設定を可能とすべきである。

  3. 内航海運業における船腹調整事業および運賃協定の見直し
    1. 内航海運業では、過剰船腹の解消と業界体質の改善を目的として船腹調整事業が約30年にわたり実施されてきたが、同事業の継続による参入規制は建造引当船に対する既得権を発生させ、構造改善を停滞させるなど、業界の発展にとってもマイナスとなっている。今後、船腹調整事業および運賃協定の見直しを進めることによって、参入コストの低減や自由競争体質の回復を通じた内航業界の活性化をもたらすとともに、利便性が高く魅力的な物流サービスが提供されるようにすべきである。モーダルシフトの推進など内航海運の役割増大が期待されている今こそ、内航海運業に係る規制緩和を急ぐべきである。併せて、内航海運業の経営基盤の強化を目的とした構造改革を推進していくことが求められる。

    2. 97年3月の規制緩和推進計画の再改定では、コンテナ船、RORO船については「平成10年度末までに船腹調整事業の対象外とする」とされており、早期かつ着実な実施が求められる。また、その他の船舶については「4年間を目途に所要の環境整備に努め、その達成状況を踏まえて同事業への依存の解消時期の具体化を図ることとするが、同事業の前倒しにつき中小・零細事業者に配慮しつつ引き続き検討する」とされているが、具体的な実施スケジュールを明示しつつ早期実現を図るべきである。

    3. また運賃協定については、「内航タンカー運賃協定及び内航ケミカルタンカー運賃協定を10年度末までに廃止する」とされているが、可能な限り早期に廃止すべきである。

  4. 国内航空分野における参入規制および価格規制の撤廃
    1. 国内航空分野においては、97年3月の規制緩和推進計画の再改定において需給調整規制廃止の方針が打ち出された。外国航空企業との厳しい競争にあるなかで、規制緩和政策をさらに進めることにより、市場原理に基づく競争促進を行い、わが国航空企業の経営体質強化を図ることが急務である。また、利用者ニーズにより適合したサービスや運賃を提供していくためにも、参入規制および価格規制を撤廃し、航空会社の事業運営の自由を実質的に確保する必要がある。従って、需給調整規制廃止を実効性あるものとするためにも、政策的競争環境整備を運輸政策審議会に期待する。

    2. 需給調整規制の廃止にあたっては、航空会社の自由な路線設定や増減便を実質的に担保できる制度を確立する必要がある。これと併せて、既存路線の減便・撤退に伴う生活路線の維持方策を確立することが必要である。
      混雑空港における発着枠の配分や既存発着枠の流動化にあたっては、客観的で透明性の高い手法を確保するとともに、市場の活性化を通じて競争促進に資する方策を、具体的な制度設計を行うなかで確立すべきである。

    3. 価格規制については、国内線における幅運賃制度の導入以来、多様な割引運賃の設定が行われ、市場に一定度の競争状況がみられるものの、航空事業者の公正かつ自由な競争を促進し、市場原理に基づく運賃の多様化、弾力化がさらに図られるよう運賃制度のあり方を見直す必要がある。
      需給調整規制が廃止される以上は価格規制を継続する根拠は乏しい。激変緩和を考慮する場合には、運賃の上限・下限規制撤廃までの手順とスケジュールを明示した上で、段階的に価格規制を撤廃すべきである。


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