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21世紀に向け新しい規制緩和推進体制の整備を望む
〔別 紙〕

分野別の規制緩和の課題

9.社会保障制度分野


  1. 医療における市場原理に基づく価格制度の導入と、本格的な民間企業の参入
  2. 1995年度の国民医療費は27兆円となり、対国民所得比で7.1%に達した。今後の国民医療費の伸びは国民所得の伸びを恒常的に上回ることが確実視されており、厚生省の推計によれば、2025年度には19%にまで高まる。他方、医療保険財政は、悪化の一途を辿っている。中でも、政管健保は、1997年度健康保険法改正によって一時的に破綻は免れたものの、1999年度には再び破綻の危機を迎える。
    医療費の総額を抑制し、保険財政を健全化させるためには、老人保健制度を抜本的に改革するとともに、医療の分野でも規制の撤廃・緩和を推進し、本格的に競争原理を導入することで、医療の効率化を徹底しなければならない。具体的には、次の3点について、規制緩和を推進すべきと考える。

    1. 薬価基準制度、診療報酬制度の見直し
      現在、薬価ならびに診療報酬は、公定価格となっているが、これらを市場原理に基づく価格制度に改める。

    2. 保険者機能の強化
      保険者によるレセプト審査を強化するとともに、良質かつ効率的な医療を提供する保険医との選択的契約、さらには診療報酬等の個別契約を認める。

    3. 民間企業の病院経営への参入、広告規制の緩和
      医療サービスの多様化、質の向上が求められていることに対応するため、医療分野においても民間企業の参入を認め、民間企業の知恵とノウハウを活用して、無駄の排除や効率化を進める。また、利用者の利便を高めるためにも、病院の広告規制を緩和する。

  3. 介護サービスへの民間企業の全面的な参入とバウチャー制度の導入
  4. 高齢者介護など福祉の分野においても、多様化する利用者のニーズに対応するとともに、効率化を推進し、福祉に要する費用を可能な限り抑制するため、医療と同様、本格的に競争原理を導入すべきである。具体的には、次の2点について、規制緩和を推進すべきと考える。

    1. 民間企業の施設介護サービス事業への全面的参入および広告規制の緩和
      介護サービスの多様化、質の向上が求められていることに対応するため、介護分野においても民間企業の参入を全面的に認め、民間企業の知恵とノウハウを活用して、無駄の排除や効率化を進める。また、利用者の利便を高めるためにも、介護施設の広告規制を緩和する。

    2. 福祉サービスの選択肢の拡充(バウチャー制度の導入)
      従来、高齢者介護等の福祉サービスは、公的機関が現物給付という形で提供してきた。これは「措置制度」と呼ばれ、利用者の選択肢はほとんど認められてこなかった。しかし、高齢化が進み、利用者のニーズが多様化していることから、措置制度の廃止と多様な事業主体の参入が計画されているところであるが、更にバウチャー制度を導入し、利用者の福祉サービスの選択権を確保することが必要である。
      バウチャー制度の下では、福祉サービスを必要とする市民に対してバウチャーが交付され、市民は福祉サービス事業者を選択して、その対価をバウチャーと自己負担金で支払うこととする。

  5. 企業年金制度の自由な制度設計・運用と税制の制度間格差の是正
  6. 退職した高齢者の生活を公的年金だけで支えることはもはや不可能であり、国民の自助努力による私的年金の充実を促す必要がある。

    1. 自由な制度設計
      そのためには、厚生年金基金、適格年金など制度的に分かれている企業年金を包括的に規定する「企業年金法(仮称)」を定め、その中で、企業年金を私的年金として明確に位置づけるとともに、労使の合意と情報公開を前提にした自由な制度設計とする。

    2. 税制の制度間格差の是正
      特別法人税を撤廃し、年金課税は受給時に一本化することにより、厚生年金基金、適格年金等制度間の格差をなくす。併せて、ポータビリティを確保するために、個人年金勘定(仮称)を設ける。

    3. 公的年金改革
      公的年金の報酬比例部分を積立方式に移行するなど、公的年金制度の抜本的な改革を行う。


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