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21世紀に向け新しい規制緩和推進体制の整備を望む
〔別 紙〕

分野別の規制緩和の課題

4.農業分野


  1. 農業生産法人に係る諸要件の見直しなど農地取得に係る規制緩和
    1. 1952年に制定された農地法は、「農地は自ら耕作を行うものにその取得を認める」とする「耕作者主義」が採られており、原則的に農地保有は農家に限定されている。数次にわたる農地法の改正等により、農業生産法人による農地取得は認められるに至ったが、現在でも株式会社形態は認められていないなど、農業生産法人の組織形態や事業範囲、構成員要件等には制限が課されている。
      わが国農業は、兼業化が進むとともに、後継者不足による高齢化が進展していることから、農業の多様な担い手を確保し、農業生産を活発化させることが必要である。農業の法人経営は、働きやすい労働環境の提供や、新規就農者の農業への参入、様々な外部環境への対応といった点で優れた面があると考えられ、現在一定の枠内でのみ認められている農業生産法人制度の諸要件を緩和し、制度内容を一層充実させる必要がある。

    2. 具体的には、創意工夫を活かした経営を推進する観点から、事業要件を緩和し、農業生産を行うことを条件に、基本的に他の事業も自由に行えるようにすべきである。また、資金調達先を広げる観点から、構成員要件を緩和し、農産物や農業資材等の取引先企業や自治体による資本参加を可能とするとともに、株式会社の農業生産法人への出資に対する総量規制も緩和すべきである。さらに、経営の分業体制を強化する観点から、現在、農業生産法人の役員の過半数はその法人の行う農作業の常時従事者である構成員が占めなければならないとされている経営責任者要件を緩和すべきである。

    3. さらに、農業生産法人制度の充実の一環として、より広く外部から資金を調達し、高生産性を追求した大規模経営や事業の多角化を可能にするため、営農形態の選択肢の一つに株式会社形態を加えるべきである。
      株式会社の農地転用懸念に対しては、農地の転用期待をなくす方向で土地利用計画を厳格化し、転用規制を強化することが必要である。
      なお、株式会社の農地取得を認めるにあたっては、まずは借地方式による株式会社の営農を推進するなど、段階的に進めていくことが考えられる。
      さらに、農地法の大原則である「耕作者主義」についても、見直しを行うべきである。

  2. 市場メカニズムの一層の活用に向けた新食糧法の見直し
    1. 1995年11月に施行された食糧法は、政府による全量管理が改められ、生産者の自主性を活かした稲作生産の体質強化や、市場原理の導入、規制緩和を通じた流通の合理化を目指しており、一定の評価はできる。しかしながら、生産調整助成金の交付が継続されるなど、生産調整に参加するか否かについて生産者自らの主体的判断が行われにくい仕組みが依然として根強く残っている。また、価格形成についても、自主流通米の価格決定にあたって値幅制限等が行われ、需給実勢を的確に反映しない仕組みになっているなど、未だ問題が多い。

    2. コメに関する政府の役割は、当面、備蓄運営とミニマム・アクセスの運用に限定し、米穀流通に係る規制緩和を徹底するとともに、価格形成は市場原理に全面的に委ねていくべきである。また、生産調整も、市場により形成される価格その他の市場実勢を勘案しつつ、個々の生産者が自らの経営判断に基づいて行うことを基本とすべきである。さらに、ガット・ウルグアイ・ラウンド合意においてコメの関税化は猶予されたが、2001年における関税化は避けて通れないことから、大規模経営体の育成などの体制整備を急ぐべきである。

    3. 具体的には、米穀流通に関し、登録要件の緩和や売渡先の拡充など一層の自由化を推進すべきである。また、当面、自主流通米価格形成センターにおける公正な価格決定・取引方式を確立すべく、上場数量の拡大や入札回数の増加、値幅制限の緩和・撤廃、売り手・買い手の多様化等の措置を講じるとともに、米穀の政府買入価格・売渡価格を段階的に引き下げていくべきである。97年産米の取引について、値幅制限の緩和や上場数量の拡大などが行われることは評価できるが、小幅な改善に止まっていることから、今後さらに大幅な改善を図るべきである。
      さらに現在、民間主導で進められている計画外流通米の現物市場設立に向けた動きは評価でき、現在のような1物3価といった歪んだ価格形成を是正し、市場の評価が適切に反映されるよう、統一的な現物市場を確立していくべきである。将来的には、農家経営に係るリスクの軽減を図るため、先物市場の確立も検討すべきである。

    4. 加えて、公正な価格形成の観点から、不公正な取引方法や競争の実質的制限による不当な価格の引き上げ等については、独禁法が厳格に遵守されるよう、市場参加者に対する公正取引委員会の監視を強めるべきである。

  3. 農産物価格支持制度(小麦、てん菜・さとうきび、豚肉、加工原料乳)等の見直し等
    1. 戦後、わが国の農業政策では、重要な農産物に関して、品目毎に異なる仕組みにより、政府が市場に介入する価格支持制度等が導入されてきた。例えば、小麦やてん菜・さとうきびについては、市場価格が政府の定めた最低価格を下回る場合に政府が買い支えるという最低価格保証制度が、豚肉等については、政府の定めた上限価格と下限価格の幅の中に市場価格を安定させるため需給操作を行う価格安定制度が、さらに加工原料乳について、政府の定めた保証価格と乳業メーカー買入価格の差額を生産者に財政資金で支払うという交付金制度(不足払制度)がそれぞれ導入されている。
      これらの価格支持制度等は、国境措置とリンクしたかたちで、国内の農産物価格を高い水準に維持することを通じて、農家に対して実質的な所得補償を行うという機能を有してきた。しかしながら、豊かな国民生活の実現のため、内外価格差の縮小を求める声が高まっていること、また、安い食料加工品・中間製品の輸入増と割高な国内農産物原料の購入を余儀なくされている状況との間で、厳しい経営環境に直面しているわが国食品工業の空洞化懸念が強まっていることなどを踏まえ、農産物の価格支持制度を抜本的に見直すことが必要である。食品工業の空洞化は、食品工業を重要な供給先としている国内農業の需要減にもつながり、国内農業の存立基盤も危うくすることに留意する必要がある。

    2. 当面は、農産物の行政価格や関税水準を段階的に引き下げていく必要がある。加えて、関税割当枠を拡大するとともに、関税割当に伴う国産農産物の引取り義務を廃止していくべきである。さらに、5年後を目途に農産物の価格支持制度を廃止することとし、直接所得保障制度の導入など価格支持制度に代わる措置を講じていくべきである。

    3. 現行の消費者・ユーザー負担型の価格支持制度等については、制度内容や消費者負担を含めた国内農業維持のための国民負担額が把握しにくいことから、政府は、本問題について幅広く国民的な合意形成を図るために、農業保護によってもたらされるメリットと消費者負担分を含めた国内農業維持のコストの双方を具体的に明らかにすべきである。


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