経団連のアジア・大洋州地域委員会企画部会(藤野隆部会長)は7月27日、東京・大手町の経団連会館で日豪EPAに関する懇談会を開催し、別所健一・外務省南東アジア経済連携協定室長、塩谷和正・農林水産省国際経済課交渉官、千代光一・経済産業省経済連携課企画官から、日豪EPA(経済連携協定)交渉の状況や妥結に向けた課題などについて聞いた。説明の概要は次のとおり。
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日本から豪州への輸出は自動車部品など輸送用機器や一般機械を中心に、約1兆4千億円である。一方、豪州からの輸入は資源、食料を中心におよそ4兆円であり、金額・品目ともに対照的である。直接投資も、日本から豪州を100とすれば、豪州から日本は1である。このようななかで互恵的な日豪関係を築くためにEPA交渉を行っている。
豪州とのEPAには、日豪の包括的戦略関係の強化やエネルギー・鉱物資源・食料の安定供給確保、第三国との差別的待遇の回避といった意義がある。交渉は、2007年4月の第1回会合から直近の12年6月まで、計16回開催している。東日本大震災の発生による中断などもあったが、日本側としては、10年11月に発表した「包括的経済連携に関する基本方針」にあるように、日豪EPA交渉の妥結に向けた取り組みを加速化すべく、交渉を重ねてきている。
具体的な交渉分野は、物品市場アクセスや投資、サービス貿易、知的財産など20分野にわたり、これまで日本が締結したEPAに含まれる分野が大半を占める。一部、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉と重複する分野もある。交渉は着実に進展しているが、分野により進捗状況は異なっており、TBT(規格など貿易の技術的障害)やSPS協力(衛生植物検疫)、電気通信サービス分野に関する交渉はほぼ終了している。
他方、物品市場アクセス分野では約9千品目の関税について交渉しているが、特に農業分野では、豪州からの主要輸入品目である小麦、砂糖、牛肉、乳製品がいずれも日本側のセンシティブ品目であり、国内への影響が予想されることから難航している。この問題の解決には、農家への所得補償のような財政措置が不可欠と思われるが、現状ではそのための十分な財源確保が難しい。したがって、日本側としては、日豪EPA全体を双方にメリットのあるバランスの取れたものとして、豪州側の対応を柔軟化させるよう努力している。また、エネルギー・鉱物資源や食料供給の分野では、これらを安定的に確保することができるような内容の条文を目指して交渉している。
TPPと日豪EPAの位置付けの議論に関しては、日豪間にはエネルギー・鉱物資源、食料など両国間に特有の関係や貿易・投資構造があり、日豪EPAでは、そうした特有の関係を勘案した協定を結ぶことができる。豪州も、二国間のEPAとTPPとは切り離して考えており、TPP参加国のマレーシアとの間でも最近、EPA交渉を終えた。多国間の枠組みでは実現できない特有のメリットを見いだしているものと思われる。
【国際経済本部】