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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年3月7日 No.3122 独占禁止法の今後の課題について議論 -21世紀政策研究所が第96回シンポジウム「グローバル化を踏まえたわが国競争法の課題」開催

21世紀政策研究所(米倉弘昌会長、森田富治郎所長)は2月21日、東京・大手町の経団連会館で第96回シンポジウム「グローバル化を踏まえたわが国競争法の課題」を開催した。

シンポジウムではまず、宇都宮秀樹・弁護士(研究会委員)が、昨年9月25日から10月1日にかけて実施した欧米調査について報告した。欧米の競争当局および法律事務所から、(1)調査・捜査手続や制裁の実態(2)リニエンシー申請の考慮要素、当局間の協力・連携の実態――を聴取し、欧米における弁護士依頼者間秘匿特権、弁護士の立会い、手持ち資料の開示等の現状を明らかにした。

続いて、村上政博・一橋大学大学院教授(21世紀政策研究所研究主幹)が、「独占禁止法の今後の課題」と題して、(1)裁量型課徴金制度の導入(2)国際標準の競争法体系・ルール(3)国際的なカルテルの重罰化への取り組み(4)行政調査の見直し――について、自らの研究活動の蓄積に基づく見解を報告した。

パネルディスカッションでは、上杉秋則・元公正取引委員会事務総長、内田晴康・競争法フォーラム会長、川田順一・経団連経済法規委員会競争法部会長、泉水文雄・神戸大学大学院教授、但木敬一・元検事総長を迎え、次の4テーマについて活発な議論が展開された。

■ 国際標準の競争法へ

泉水氏は、「不当な取引制限」に関する判決の評釈を紹介し、上杉氏は、企業によるプロアクティブなコンプライアンスの構築のために国際標準の分析・判断プロセスの確立が必要である旨指摘した。

■ 国際的なカルテルに対する重罰化への対応

但木氏は、日米の刑事手続や理念の異同を説明し、内田氏は、企業が留意すべき欧米の手続や制裁の特徴を説明した。また、川田氏は、グループ企業全体におけるコンプライアンス・プログラムの徹底の重要性を指摘した。

■ 課徴金制度のあり方

但木氏は、制裁の予測可能性、算定過程の透明性・公正性の確保の重要性について指摘し、川田氏は、公正取引委員会に裁量権限を与えることへの懸念を示した。泉水氏は、現行の課徴金制度の課題を幅広く指摘し、内田氏は、欧州委員会の行政制裁金の執行過程からみた裁量型課徴金制度導入に対する懸念事項を紹介した。上杉氏は、企業の実需を意識して具体的に課徴金制度について議論すべきと指摘した。

■ 公取委による行政調査手続の見直し

但木氏は、刑事手続の見直しの現状とそれによる行政調査手続への影響を説明し、川田氏は、審判制度早期廃止を求めたうえで、刑事罰・行政処分はいずれも企業にとっては重いものであり、中立・公正な場で見直しの議論がなされるべきと指摘した。内田氏は、公取委の手続として適正・妥当かという観点から見直しを考えるべきと指摘し、泉水氏はまず公取委による行政調査手続の運用を改善すべきと指摘した。上杉氏は、個人責任の追及ではなく、法人を対象にした調査であることを意識した制度を設計すべきと指摘した。

活発な議論が展開されたパネルディスカッション

シンポジウムでの議論の詳細は、21世紀政策研究所新書として刊行予定である。

【21世紀政策研究所】

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