経団連では1997年から自主行動計画のもと主体的に温暖化対策に取り組み、省エネやCO2排出削減に多くの成果を上げてきた。今年1月には、自主行動計画を進化させた低炭素社会実行計画を策定し、新たな活動を開始している。
こうしたなか、政府は今年1月の安倍晋三首相の指示に基づき、11月にポーランドのワルシャワで開催されるCOP19(国連気候変動枠組条約第19回締約国会議)までに、25%削減目標をゼロベースで見直すとともに、技術で世界に貢献する「攻めの地球温暖化外交戦略」を策定する予定である。そこで、同戦略が、低炭素社会実行計画と有機的に連携していくことを期待し、経団連は16日に「攻めの地球温暖化外交戦略への提言」を取りまとめ公表した。
■ 温暖化対策と経済成長との両立に向けて
温暖化対策と経済成長との両立のカギを握るのは優れた技術である。日本の産業界が有する優れた技術・製品・ノウハウが広く海外に普及することで、各国のエネルギー効率の改善と低炭素化・省資源化を進めることが可能になり、地球規模の温暖化対策に貢献できる。また、日本企業の海外でのビジネスの拡大にもつながり、日本経済の再生にも資することとなる。
また、大幅な排出削減を可能とする革新的技術の開発・実用化に向け、政府には技術開発に向けた工程表を産業界と共有するとともに、研究開発投資を重点分野に集中的に行うことが求められる。
■ 二国間オフセット・メカニズムの促進に向けて
わが国からの技術面・資金面での協力を通じて温室効果ガスを削減した場合の成果を相手国と分かち合う仕組みとして、政府が各国と交渉を進めている二国間オフセット・メカニズムは有効なツールとなる。同メカニズムで、個別の排出削減プロジェクトを実行する産業界の意見を十分に反映させるため、政府間で設置される合同委員会の下に産業界も参加する場を設けることが望ましい。また、ASEAN諸国やインド等の有望国との交渉の加速・早期締結なども必要である。さらに、透明性・信頼性等を確保したうえで、可能な限り柔軟で活用しやすい制度とすることが求められる。
■ 2020年以降の将来枠組みのあり方
すべての国に適用される2020年以降の将来枠組みにおいて、各国が国情を踏まえて最大限の取り組みを行うよう促すには、最先端技術の最大限導入を前提とする目標設定を行い、その目標を相互に検証する方式が有効である。
経団連はこれまで、各国が削減目標・行動計画を提出・誓約して国際的に検証する方式が有効だと主張してきた。途上国や新興国のなかで排出量の多い国や能力を有する国が先進国と同様の削減に取り組むことを促すためにも、今後、各国の自主性を重んじる考え方を軸に交渉が進むことを期待する。
■ 実効性ある攻めの地球温暖化対策への期待
わが国の経済成長、途上国支援等の国際貢献、真の地球規模での温暖化対策が一体となって実現するよう、政府には実効性ある攻めの地球温暖化外交戦略を策定するよう期待したい。
【環境本部】