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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年2月20日 No.3166 「2014年米国の政治経済情勢-米国経済の夜明けと出口戦略」 -昼食講演会シリーズ<第23回>/双日総合研究所副所長・吉崎達彦氏

経団連事業サービス(米倉弘昌会長)は1月29日、東京・大手町の経団連会館で第23回昼食講演会を開催し、双日総合研究所の吉崎達彦副所長から「2014年米国の政治経済情勢」について講演を聞いた。講演の概要は次のとおり。

■ 2014年の経済見通し

今年の米国の情勢を一言でいえば、リーマンショック以来の経済混乱が落ち着き、これまでの大胆な金融緩和政策という非常措置が徐々に解除され、出口戦略に向かうものの、さまざまな課題があり簡単にはいかない1年になるだろう。米国の調査会社ユーラシア・グループが1月に発表した「14年世界の10大リスク」の首位は、「米国の困った同盟関係」という項目であった。今回のトップ10は、米国経済に関わる項目がない一方、中東関連項目((4)イラン(5)産油国(6)アルカイダ(8)中東全体の不安定化(10)トルコ)が半数を占め、中東の地政学上のリスクが高まっているが、米国では外交戦略に対する世論の後押しがない。オバマ外交の機能低下が懸念され、日本・イスラエル・英国などの同盟国が困惑することになると見通している。また、第2位は「多様化する新興国」であった。今年は、選挙を控える新興国が多く、政情不安が高まる国もあり、経済成長でも格差が出るとみられる。

一方、エコノミストのエド・ハイマンによる14年の経済見通しは、日本・米国・欧州・新興国がすべてプラス成長という世界同時拡大を遂げ、債権市場の金が株式市場へ移動し株価が上昇するほか、人口増加・シェールガス革命・住宅市場の底入れ等で「アメリカのルネサンス」が始まるとの非常に強気な見解であった。雇用統計も堅調に推移しており、昨年末には失業率が6.7%まで低下した。ただし同時に労働参加率の低下がみられ、長期失業者の求職活動の放棄が背景であるとの問題指摘もあるが、確実に雇用情勢は改善している。実質GDP成長率も4.1%(13年第3四半期)と、増税や歳出削減にもかかわらず個人消費がプラス1%台で安定していることから米国経済は堅調である。

■ 高まる金融政策への関心

このようななか、FRBのイエレン新体制による金融緩和縮小に向けた動向に注目が集まる。イエレン氏が政治とのコミュニケーションが円滑に取れるか、その手腕が試されるのはこれからである。昨年秋に政府機関閉鎖にまで至った財政協議も、超党派協議会の合意を経て1月に予算が成立し、債務上限問題も先送りされるとみられる。FOMCは12月に資産買入額を100億ドル減額したが、新興国経済への影響を見つつ、今後も毎月の買入額を徐々に減額し、年内には買入終了との予測もある。

その後の手順としては、(1)国債等の償還資金再投資の中止(2)利上げの開始(ただし失業率6.5%以下、インフレ率2%以上が条件)(3)資産売却でバランスシートを圧縮――と進むとみられるが、マネタリーベースが約4兆ドルという異例の規模でもあることから、現時点は「出口の入口」に着いたにすぎず、「平時の金融政策」に戻るまでには遠い道のりがある。

■ 2014年中間選挙と今後の日米関係

過去20年間、与野党間の溝は広がってきた。オバマ政権誕生で党派色が薄れることも一時期待されたが、ティーパーティー運動等の右派の勢力拡大とオバマケアを契機とした共和党の躍進から、ねじれ議会のもと対立は深まり、昨年秋には政府閉鎖を引き起こした。

この経過を1995年冬のクリントン政権下での政府閉鎖と比較すると、いずれも医療保険改革をめぐる民主党政権と共和党議会との対立であり、結果として96年の中間選挙では民主党が勝利している。これを教訓に共和党が財政協議で妥協し、今秋の中間選挙に備えているという状況である。選挙区でみると党派対立がさらに進み、左派・右派ともに極端に偏る主張をしないと選挙で勝てない。08年選挙ではオバマ大統領は無党派層の支持を得たが、14年選挙では若者、女性、ヒスパニック等、これまで政治の表に出ない人たちの票を固めるため、さらにリベラルな主張を打ち出すとみられる。

今後の日米外交日程では、4月の日米首脳会談をきっかけに、夏にはTPP交渉が妥結というポジティブなシナリオがある。また、集団的自衛権の解釈変更を経て、日米防衛ガイドラインの負担見直しなどの懸案事項の前進もあり得る。

今年は世界経済の主役は新興国から先進国へ移り、金融政策では米国が一足先に出口戦略に入ることでの影響がどのように出るか、安全保障面における安倍政権の積極姿勢とオバマ政権の消極姿勢がうまくかみ合うか等が注目される。

【経団連事業サービス】

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