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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年4月3日 No.3172 第9回「経団連 Power UP カレッジ」開催 -「足元を見つめ、次の飛躍に備えよう-感謝する経営・感謝される経営」/旭化成の伊藤会長が講演

講演する旭化成の伊藤会長

経団連事業サービス(米倉弘昌会長)は3月12日、東京・大手町の経団連会館で第9回「経団連 Power UP カレッジ」を開催し、旭化成の伊藤一郎会長から「足元を見つめ、次の飛躍に備えよう-感謝する経営、感謝される経営」をテーマとする講演を聞いた。講演の概要は次のとおり。

■ はじめに

当社は火薬や肥料原料からレーヨン等の人工再生繊維をつくり出したことが創業の原点だが、その後も例えば繊維の中空糸技術の人工透析器やバイオ医薬品製造におけるウイルス除去フィルターへの応用、建材開発から住宅事業への参入など、基盤となる技術を核にさまざまな事業ポートフォリオを増やしてきた。

当社の特徴は、現場力の強さと自らが持つ技術をベースに新しい仕事をつくるという「挑戦するDNA」が連綿と続いてきたことにある。まずは足元を見つめ、取り巻く環境に応じて事業内容を変え、皆で協力してやり遂げることが大事である。

■ 世界の潮流変化と日本企業の進むべき道

この10年のメガトレンドを概観すると、(1)貧困および失業者の拡大(2)金融資本主義の限界(3)エネルギー問題や気候変動・生態の変化(4)インターネットの政治・経済への影響拡大(5)食糧・水の危機(6)国際的な政治・経済秩序の不安定化――等が挙げられ、21世紀半ばには世界人口の急増に伴い、食糧・水・エネルギーの需要も大幅に増加する見通しである。

単純なものづくりの主役はすでに新興国へシフトするなか、天然資源に乏しく、食糧自給率も低く、労働力人口が減少する日本が、従来とは別の面で世界に貢献できなければ、その存在価値は下がる。課題先進国である日本は、進化する科学工業立国を目指して課題解決型イノベーションモデルを構築し、世界が必要とする新たな社会価値を創出し貢献すべきである。また、国際分業のもと、ハードとソフトをあわせて輸出するパッケージ型のビジネスモデルを追及し市場をつくりだす必要がある。そのために、政府は成長戦略を推進し、新たな通商ルールの策定参画、為替安定、岩盤規制の改革、エネルギーベストミックスの追求、高度人材育成を含むイノベーションの基盤整備、財政の健全化等の役割を果たす必要がある。

また、日本企業は、ものづくりの原点に回帰し手堅い技術力を磨き、例えばiPadのようなグローバルトップブランドの構築に参画し、人を活かした日本的経営を進化させつつ、グローバル展開を進めることが求められる。

同時に国内需要を徹底的に追求し、少子高齢社会に対応したインフラ整備、女性の活躍推進、地方の活性化と国内雇用の創出を図ることも不可欠である。

■ 感謝する経営・感謝される経営

このような環境変化のもと、求められるリーダー(経営者)像とはどのようなものか。リーダーとは集団(組織)の求心力の中心に位置する人であり、リーダーシップとは集団(組織)をまとめて目的を実現する力である。新規事業の立ち上げやビジネスモデルの転換は苦闘の連続であり、志を同じくする仲間が結集して、夢を語り知識を刺激し、切磋琢磨して継続的に学習する集団をつくることこそ、リーダーの役割であり、成功への道である。

今回の副題「感謝する経営、感謝される経営」には、自分が活躍できる現在の環境をつくってくれた先輩や事業を支えてくれる社内外の関係者に感謝すること、さらに少しでもよい経営にして次代に引き継ぎ感謝されるよう努力すること、そのようなことを目指し仕事に励むことが大切であるとの思いを込めており、サステナブル経営の原点であると考えている。

リーダーの資質・衿持として(1)感謝の気持ち(2)人を鼓舞する能力(3)合理性と情をあわせ持つ(4)洞察力(想像力)と実行力(勇気)(5)コミュニケーション能力(人の話をよく聞く)――の5点が挙げられる。また中堅幹部には、自分たちの事業は自分たちが自信を持って守り育てるという気概、後輩に少しでも多くのプラスの遺産を託すという思いが大事である。新規事業は成果を出すまでに時間がかかることも多いが、中長期の視点で周囲を説得し取り組むことが大事である。

また世の中には変えるべきことと変えてはならないことがある。パラダイムシフトが起きているならば事業構造・ビジネスモデル・意識など、議論を重ねつつ果敢に変革すべきである。

一方、人材を大事に育てるということは、決して変えてはならない経営の原点である。公平な人事と評価のもと、部下を育成していってほしい。

【経団連事業サービス】

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