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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年4月10日 No.3173 村井宮城県知事と懇談 -道州制推進委員会企画部会

講演する村井宮城県知事

経団連の道州制推進委員会企画部会(田川博己部会長)は3月26日、東京・大手町の経団連会館に村井嘉浩宮城県知事を迎え、「地方の視点から道州制を考える」をテーマに説明を聞くとともに懇談を行った。村井知事の発言の概要は次のとおり。

1.なぜ今、道州制か

震災直後、災害廃棄物や原子力発電所事故など、被災地だけでは対応できない問題が発生し、国の対応の遅さに批判が集まった。しかし、実際には中央官庁の職員は寝食を忘れるほど仕事をしていた。問題は彼らにあるのではなく、国が平時から多くの業務を抱えていることだ。地方が内政をきちんと担い、国の平時の業務負担を減らすことで、国も外交や有事対応に集中することができると考える。

2.地方からみた道州制

地方は、財政、立法、行政の三つの側面で問題を抱えている。

財政面では、地方は国の財源に大きく依存せざるを得ない状況に陥っている。国は国税を徴収してから地方に地方交付税や補助金のかたちで再配分している。地方交付税は地方自治体の税収が増えると減額され、地方の収入全体は増収分の4分の1しか増えない仕組みであるため、地方自治体は増収に向けた努力よりも支出増に向かいがちだ。加えて、「ひも付き補助金」制度では、対象事業について事業費の5割補助だけでなく、残りの地方負担額の9割分に地方債の起債を認め、その借金の半分は国が地方交付税で補填するという手厚い支援の仕組みがある。このため、地方にとっては本来優先的でない事業まで誘発している。

立法面では、地方の自治立法権が国の法律の枠内に縛られてしまっている。地方自治法や地方税法といった国の法律には、すでに細かい規定があり、例えば定例県議会の招集権者を県議会議長にすることはできないし、地方税を自由に課税することもできない。

行政面では、国の許認可などの統制で地方の独自性が発揮できないという問題がある。地方で企業誘致をしようとしても、土地利用については法律で国の許認可が必要とされていることが多く、調整に時間を取られているうちに、スピードを求める企業は海外に流出してしまう。

こうした課題を解決するためには、道州制の導入によって従来の都道府県という行政単位の範囲を見直す「規模の改革」と地方の自主的な権限の確立と財政的自立という「仕組みの改革」という二つの改革を同時に行う必要がある。

地方には「上書き権」を含む広範な自治立法権を付与するとともに、大規模な税源移譲を行うべきである。ただし、地域間で税源には格差があるため、何らかの財政調整制度は必要だ。

今後の検討課題としては、(1)国と地方の具体的な役割分担(2)中央府省・出先機関の再編・解体(3)税財政改革の抜本的な推進(4)道州の組織・区域(5)大都市制度(6)国全体の借金の按分――などがある。これらの課題を乗り越えて国のために改革を進めるには、政治の強いリーダーシップが必要だ。

3.道州制導入に向けて

2012年に道州制の導入を目指す有志の首長が、道州制推進知事・指定都市市長連合を立ち上げた。私も共同代表を務めている。道州制が実現すれば首長を失職する可能性が大きいが、日本のため、私心を捨てて取り組むべきと考えている。

【産業政策本部】

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