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  5. イノベーションの創出に向けた大企業とベンチャー企業との連携のあり方を聞く

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年5月15日 No.3176 イノベーションの創出に向けた大企業とベンチャー企業との連携のあり方を聞く -早稲田大学ビジネススクールの長谷川教授から/起業創造委員会

経団連の起業創造委員会(荻田伍委員長、根岸修史共同委員長)は4月14日、東京・大手町の経団連会館で、長谷川博和・早稲田大学ビジネススクール教授を来賓に迎え、「新規事業の創造とベンチャー企業との連携」をテーマに説明を聞くとともに懇談を行った。
長谷川教授の講演概要は次のとおり。

1.第4次ベンチャーブームの到来

現在、第4次ベンチャーブームが到来している。これまでのベンチャーブームと異なり、今回は世界各地で同時多発的にベンチャーが勃興している。その最大の要因はIT技術の普及である。ITの導入や活用を進めていくとインフラコストが下がり、少ない初期投資で起業できるようになった。その結果、欧米や日本のみならず、アジアでもスマートフォンを活用したベンチャーが増えている。

大企業にとっては、こうしたベンチャーの勢いを取り入れ、自らの活力としていくという観点から、ベンチャーとの連携を進めていくことが重要になっている。

2.経済活動のエンジンとしてのベンチャー

ベンチャーは経済活動のエンジンであるが、日本では低調である。米フォーブス誌が時価総額や雇用者数で選んだ世界のトップ2000社のうち、金融を除くと、米国でランクインした466社中154社が1980年以降に設立されたベンチャー企業である。対する日本では、184社中25社にとどまっている。さらに、米国の新興企業の時価総額は日本の10倍であり、米国の雇用の1割がベンチャー企業からもたらされている。ベンチャー促進には雇用創出等、社会的意義がある。

3.「ベンチャー・エコシステム」の醸成

現在のベンチャーを一過性のブームで終わらせないためにも、ベンチャーや新事業の創出が自律的に実践される「ベンチャー・エコシステム」をつくる必要がある。従来のベンチャー支援策はベンチャーのみに焦点が当たっていたが、大企業、年金資金運用、教育、規制改革、政府調達等、多様な側面から社会全体でベンチャー支援を行うべきである。

その際には、(1)最初から海外展開を意識した飛躍を可能とする「スケール」(2)起業マインドを底上げするベンチャー支援人材の育成を含めた「ヒト」(3)規制改革や国のプロジェクトにベンチャーの参加を促進するなどの「プロセス」――をキーワードに、さまざまな施策を総動員する必要がある。

4.イノベーションの創出に向けた大企業とベンチャーの連携強化

今まさにイノベーションの源泉として起業への意欲が高まり、より優秀な人材が続々とベンチャーを興そうとしている。大企業もグローバル競争下、自前ですべての事業開発を行うのは無理と考え、ベンチャーとの連携やM&Aでの事業開発を望んでいる。大企業がベンチャーと便宜的に付き合ったり、安易に成果だけを刈り取ったりするのではなく、起業家、大企業の新規事業セクション、ベンチャーキャピタル、大学・政府の四者が連携(共創)して「ベンチャー・エコシステム」を創造し、イノベーションを起こすことが重要である。そのためには、ベンチャー支援にかかわる目利き人材の育成、価値観のシフト、起業家教育、世界最先端のユニークなビジネスモデルやファミリービジネスの研究・蓄積等を強化すべきである。

【産業政策本部】

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