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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年5月15日 No.3176 医療保険制度改革の検討状況聞く -厚労省保険局の大島総務課長から/社会保障委員会医療改革部会

経団連は4月17日、東京・大手町の経団連会館で社会保障委員会医療改革部会(望月篤部会長)を開催し、厚生労働省保険局の大島一博総務課長から、政府における医療保険制度改革の検討状況について説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 医療保険制度改革の重要な論点

社会保障制度改革のあり方は、各改革項目の実施時期や内容を示した、いわゆるプログラム法に沿って検討を行うこととなっており、このうち医療保険制度の改革については、この4月から来年の通常国会への法案提出に向けた議論が開始される。

医療保険の各保険者は、増加の一途をたどる高齢者医療給付の負担によって、厳しい財政運営を迫られており、この負担をどのように分かち合うかが大きな論点となっている。このうち75歳以上の後期高齢者の医療に対する支援金に関しては、総報酬に応じた負担(全面総報酬割)とすることについて検討する旨プログラム法に記されている。

加えて今後の検討では、全面総報酬割の導入によって不要となる協会けんぽに対する国庫補助(約2300億円)の使途が大きな論点になる。関係者の意見として大きくは、(1)国保の赤字を補填する(2)協会けんぽの国庫補助を拡充する(3)高齢者医療へ充当し現役世代の保険料負担増の抑制を図る――という3案があり、今後意見交換を重ねながら、合意を目指していきたい。

■ データヘルス計画

保険料の負担増を抑制するためには、医療給付自体の伸びを抑える必要がある。その新たな取り組みとして、データヘルスが始まる。データヘルスとは、データ分析に基づく保健事業のことであり、すべての健康保険組合が今年度中に計画を策定し、来年度から2017年度にかけてを第一期として、実施することとなっている。

健保組合は加入者のレセプト情報や特定健診・指導の情報を分析し、効果的な保健事業を展開していく。具体的な取り組みとしては、ICTを活用して加入者にわかりやすく健康情報を届けることや健康活動を行った場合にポイントを付与することなどの意識づけ対策から、糖尿病や脳卒中、心筋梗塞といった疾患のリスクが高い加入者に対する集中的アプローチまで、幅広く考えられる。

初の試みであるため、各健保組合には試行錯誤してもらうことになるが、事業主との積極的な連携のほか、外部の専門事業者を活用して、有効なデータ分析や効果的な保健事業の企画立案ができるかどうかが、成功のカギを握っていると思われる。

<意見交換>

意見交換では、データヘルスに関する意見・質問が多く寄せられた。委員からの「医療情報は個人情報のため、企業としては取り扱いについて不安がある」との意見に対し、大島課長は、「既存のガイドラインに加えて、適宜Q&Aを追加していき、不安を解消したい」との回答があった。また、「加入者に対するインセンティブとして、健康づくりの取り組み具合に応じて保険料率を上下させられるようにできないか」との質問に対しては、「技術的な難しさがあり、慎重な検討が必要だが、6月には一定の方向性を示したい」と答えた。

提言「医療保険制度改革に関する要望」を公表

なお、経団連は提言「医療保険制度改革に関する要望」を取りまとめ5月13日に公表した。提言では、高齢者医療に対する税投入拡充をはじめ、現役世代に過度に依存した負担構造の見直しを訴えている。加えて、医療給付の重点化・効率化が不可欠であると指摘しているほか、データヘルス等の健保組合の保健事業に対し、事業主も協力すべきとしている。

※全文は http://www.keidanren.or.jp/policy/2014/043.html 参照

【経済政策本部】

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