Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2016年3月17日 No.3262  提言「今後の大都市政策の考え方」公表 -目指すべき都市構造=コンパクト化とネットワーク化

経団連は15日、提言「今後の大都市政策の考え方」を公表した。同提言では、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催をマイルストーンとしつつ、中長期的視点に立って、経団連ビジョンで掲げた都市像「世界から幅広い人材を集め、新技術・新産業を生み出すグローバル拠点として、世界の都市間競争で優位を誇る」を実現していくための大都市政策について提案を行っている。

■ 転機を迎える大都市政策

同提言が対象とする三大都市圏および地域ブロックの政令都市では、都市間の国際競争や少子高齢化、老朽化する各種インフラの維持更新、巨大災害に備えた防災性の向上等、さまざまな課題に直面しており、経済社会の成熟を背景に、都市政策は質的な転換が求められている。こうしたなか、国は一昨年から今年にかけて、「国土のグランドデザイン2050」「大都市戦略」「住生活基本計画」を取りまとめており、今後、各自治体ではこれらを踏まえて都市計画マスタープランの見直しが行われることが見込まれる。

しかし、現在の都市計画をみると、産業からの観点が欠けており、また企業活動の変化に対応した柔軟な見直しが難しいなど課題も多い。今後、経団連としては、計画策定時の産業界からの参加を後押しするなど、課題の解決を働きかけていく。

■ 今後の大都市政策の考え方

大都市が目指すべき都市構造としては、都市間および都市圏内における「コンパクト化とネットワーク化」である。高度成長期に薄く広がった現状の都市を機能によって集約化し、各々の拠点間のネットワークを強化することで、企業が期待する十分な市場規模、生産・サービス活動を行うための諸条件の充足、さらにはイノベーション創出や産業クラスターの再構築といった機能を高めていく必要がある。

■ 3つの切り口から見た都市政策

また、あるべき都市政策について「企業と生活者」「都市計画と各分野の政策との横断的連携」「規模別」の3つの切り口から提案している。

まず、企業と生活者の観点からは、さまざまな主体が参画するエリアマネジメントを通じて、民間活力の発揮による街の活性化を図っていくことが重要である。そのためにエリアマネジメント活動に対する予算面を含む公的支援の充実を求めている。

次に都市計画と各分野の政策との横断的連携の観点では、(1)産業・商業(2)子育て、地域医療・福祉(3)住宅(4)生活インフラ・生活環境(5)観光(6)物流(7)交通(8)環境・エネルギー・防災(9)都市農地――といった、市民生活および企業活動にかかわる各政策・計画と都市計画マスタープランとの連携の必要性に言及している。

最後に規模別にみた都市政策として、東京圏・関西圏・名古屋圏については、特区制度や新たなネットワークの整備等による既存の都市機能の集積と新規の都市再生プロジェクトの連携、高速道路網・リニア中央新幹線といった公共交通網の整備によるスーパー・メガリージョンの形成を通じ、国際的に確固たる地位を築くことを提言している。また、札幌・仙台・福岡など広域経済圏の中核となる都市については、地理上のメリット等を活かした、強みを持つ産業分野のさらなる活性化や域外経済との連携を強めていくことを求めている。

※提言の全文は経団連ウェブサイトに掲載

【産業政策本部】