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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年1月26日 No.3301 改正個人情報保護法の全面施行に向けて<第6回> -データ利活用と匿名加工情報/内田・鮫島法律事務所弁護士 日置巴美

1.データ利活用と個人情報保護法の改正

個人情報保護法の改正は、分野横断的なデータの収集・利活用によって生じる価値を新たなビジネスにつなげること等による経済活性化をねらい、データ利活用環境の整備のために行われた。このため、本人が安心してデータを提供できるための保護の側面と、ビジネス上のボトルネックを取り払うための利活用の側面からの見直し・改正がなされている。

このうち、匿名加工情報制度の新設は、利活用のための改正である。本稿では改正の背景、匿名加工情報とは何か、および制度概要について解説し、次稿において各規律を個別に解説していく。

2.匿名加工情報とは何か

(1)背景

顧客等から取得する情報を活用したいと考えた時、まず検討すべきものが個人情報保護法である。個人情報該当性があるか、利用目的の変更や第三者提供に関する本人同意を取得しているかというハードルがある。

加工した個人情報についても「容易照合性」(改正前法2条1項括弧書)が認められるがために、氏名等を削除しても個人情報に該当すると判断され、加工による匿名化についてはケース・バイ・ケースの判断が求められてきた。そして、取得後に新たな個人情報の利活用を行う場合には、当初の利用目的と相当の合理的関連性を有しない場合、目的外利用についての本人同意または、第三者提供に関する本人同意が求められるために、数百万人単位の個人情報を取り扱う者にとっては、同意取得にかかる時間・手続き等のコストが負担となってきた。

そこで、改正では「匿名加工情報」という個人情報とは異なる新たな類型を設け、本人の同意に代わる一定の条件のもと、自由に利活用できる環境を整備することとされた(図表1参照)。

図表1 データ利活用環境の整備(法改正の背景)

(2)匿名加工情報

匿名加工情報とは、個人情報を加工して、特定の個人を識別することができないよう、かつ、作成の元となった個人情報を復元することができないようにしたものである。氏名や個人識別符号等の削除を含め、個人情報保護委員会規則で定める基準(施行規則19条に基準が定められている)に従って個人情報を加工することが求められる(法36条1項)。また、匿名加工情報を取り扱うにあたっては、元の個人情報の本人識別が禁じられる(同条5項)など、利活用によっても、当該個人情報の本人の権利利益が基本的に侵害されないような規律が設けられているが、個人情報の適正な取り扱いについての規律に比して緩やかなものとなっている(図表2参照)。

図表2 匿名加工情報制度の概要

(3)個人情報と匿名加工情報のそれぞれの活用

匿名加工情報には、利用目的の制限がなく、第三者提供のための本人同意が不要とされるというメリットがある。匿名加工情報の利活用で期待されるのは、ポイントカードの購買履歴や交通系ICカードの乗降履歴等を複数者間で分野横断的に利用すること等である。ビッグデータは情報に含まれる項目の多様さ、内容の詳細さが求められるところ、匿名加工情報は一定程度、その期待に応えられるものと考えられている。

その一方、作成の元となる個人情報の本人識別が禁止されていることから、特定の人物に具体的なサービスを提供するなど、直接的なアプローチを行うことには適さない。

そこで、利活用の態様・目的にあわせて、個人情報、匿名加工情報のいずれを取り扱うのかを判断することとなる。さらに、統計情報のように、もはや個人に関する情報といえないような状態のデータは、個人情報保護法の適用外(個人情報にも匿名加工情報にも該当しない)であって、自由に利活用することが可能である。

データ取得の経緯・本人との関係性、コスト、利活用の態様・目的といった状況にあわせて、いずれの状態で情報を取り扱うのかを検討いただければと思う。

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