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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年6月15日 No.3319 これからの教員に求められる資質・能力と教員養成カリキュラムをめぐり意見交換 -教育問題委員会企画部会

経団連の教育問題委員会企画部会(三宅龍哉部会長)は5月24日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、東京学芸大学の岸学名誉教授と大阪体育大学教育学部の岸田正幸准教授から、これからの教員に求められる資質・能力と教員養成カリキュラムについて説明を聞くとともに懇談した。岸名誉教授、岸田准教授からの説明の概要は次のとおり。

■ 「教育公務員特例法等の一部改正」の持つ意味

今年4月に施行された教育公務員特例法等の一部を改正する法律は、中央教育審議会の特別部会(2010年6月~12年6月)で議論された教員養成改革の方向性を法制化したものである。具体的には、教育委員会と大学との連携協議会の設置や教員育成指標の策定、同指標を踏まえた教員育成計画の策定と実施などが定められた。

この法改正には2つの大きな意味がある。第1に、学び続ける教員であることを優れた教員の資質と認め、学び続ける教員を育てるための仕組みを初めて構築したこと、第2に教員養成段階(学部)から初任、中堅、ベテラン、管理職へと、教員としての各キャリアステージにおける教育カリキュラムを系統化する考え方を提示し、「教員養成大学」と「学校現場」の両者を同じテーブルに乗せたことである。

■ “究極のOJT”からの脱却

教員を目指す若者の特徴として、まじめでおとなしく、自身が穏やかな学生生活を送ってきたという傾向がみられる。そうした若者が、大学で実践的な教育実習を経験してはいるものの、卒業して教員になった途端、いきなり学級担任となり、教育現場で起こる問題にベテラン教員と同じように対応することが求められる。

こうした教育現場では当たり前である“究極のOJT”により、すぐに辞職する教員が数多くいる現状は問題である。そのようなOJTから脱却し、少なくとも最初の1年間は研修期間とすべきだ。また、学び続ける資質を身につけさせるうえでも、初任段階での研修は重要である。

■ 新たに求められる教員の資質・能力

これからの教員は、授業の進め方やカリキュラムをバックワード(逆算)の考え方に基づき考えるべきである。すなわち、単元ごとの到達目標に対する成果を積み上げていくのではなく、生徒が、その教科を通じて最終的に身につけるべき力を明確化し、その目標に到達するために「なに」を「どのように」教えるかを考え、実践する必要がある。

また、生徒が身につけるべき7つの汎用的スキル、8つの態度・価値(図表参照)を限られた時間のなかで教えるためには、既存の教科のなかでいかに効果的に身につけさせるかが重要であり、成功事例を広く集積するなど、教員自身も学び続ける姿勢が求められる。

これからの生徒が身につけるべき汎用的スキル、態度・価値
7つの汎用的スキル8つの態度・価値
  • 批判的思考力
  • 問題解決力
  • 協働する力
  • 伝える力
  • 先を見通す力
  • 感性・表現・創造の力
  • メタ認知力
  • 愛する力
  • 他者に対する受容・共感・敬意
  • 協力し合う心
  • より良い社会への意識
  • 好奇心・探究心
  • 正しくあろうとする心
  • 困難を乗り越える力
  • 向上心
(東京学芸大学とOECDとの共同による次世代対応型指導モデルの研究開発プロジェクトにより抽出)

<意見交換>

引き続き行われた意見交換では、経団連側からの「学び続ける姿勢を持たせるための教員への有効な研修とは」との質問に対し、「講義形式の知識詰め込み研修を一新し、授業実践を振り返るカンファレンスを行い、授業における過ちや欠点に自ら気づくことができるような研修とすべきである」との回答があった。

◇◇◇

懇談終了後には「第3期教育振興基本計画に向けた意見」(案)について、委員間で意見が交わされた。

【教育・CSR本部】

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