Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年2月15日 No.3350  ダイバーシティ・マネジメントセミナーを大阪で開催

経団連は1月30日、大阪市内で内閣府との共催により「ダイバーシティ・マネジメントセミナー」を開催した。2013年度から開始した同セミナーは、今年度で5年目を迎え、企業の管理職やダイバーシティ推進担当者ら約200名が参加した。

第1部では、お茶の水女子大学客員教授・理化学研究所ダイバーシティ推進室ダイバーシティデザイナーの西浦みどり氏による基調講演を、第2部では「見えてきたダイバーシティによる成果」をテーマに企業・団体の事例を聞いた。概要は次のとおり。

■ 基調講演
「さらなる発展のために日本が目指す真のダイバーシティとは
~求められるマインドセットチェンジ」

基調講演する西浦氏

私は、英国で12歳から貴婦人教育を受け、英国王立音楽大学を卒業後、日本に帰国した。縁あって総理府のインタビュアーを務めたことから、閣僚や財界トップなどとの対談やインタビューを数多く経験した。テレビ番組のコメンテーターやJAXA(宇宙航空研究開発機構)の役員待遇アドバイザー(広報・国際担当)などに加え、国際関係のコンサルティング会社経営、大学教授などさまざまな分野で活動している。

帰国した当時は、女性の社会的立場の弱さや“外国育ち”に対する周囲の思い込みなどにカルチャーショックを受けた。決めつけず、ありとあらゆる人・ものを認めて、そのなかで最大限に力を発揮することで、新たな発見が見つかる。例えば、名古屋の木材会社は、余った木材を活用しようと「曲がる木」や「鉄より硬い木」などを開発した。視野を広くもつことがすべての改革のカギとなる。

ワーク・ライフ・バランスも難しく考える必要はない。欧米では、プライベートライフを重視し、仕事とのバランスを取り生産性を上げようという発想が背景にあるが、日本では長時間労働に象徴される働き過ぎの是正の観点から来ている。遊びのなかから新たな発想が生まれ、仕事につながるものであり、日本人には、自分の癒やしや趣味をみつけて、そのための時間をつくることが求められる。

過去、日本は女性の才能を無駄にしてきたが、今や女性に頼らざるを得ない状況である。女性は前進あるのみ、遠慮躊躇は不要である。男性は固定観念を捨てるべきである。男・女・LGBT、すべてにおいて、お互いを尊重し、切磋琢磨し、健全な競争力で勝負し得るオープンな社会を醸成していくことが重要である。

■ 事例紹介

3社による事例紹介

続いて、パナソニック人事労政部ダイバーシティ・組織開発推進室主幹の讃井由香氏、伊藤忠商事人事・総務部長代行(兼)採用・人材マネジメント室長の澤瀉久修氏、医療法人寿芳会芳野病院事務部長の廣底幹雄氏から、各社施策のこれまでの具体的な成果や経営上のインパクト、現在進行中の取り組みや課題などを聞いた。

(1)パナソニック

讃井氏は、ダイバーシティ推進によって意欲的な女性が活躍し、忙しい女性の「ながら美容」を実現する“美容家電”という新しい市場を生み出した事例や、働きがいを感じる社員を増やしていく新たな取り組み「A Better Workstyle」を全社を挙げて推進している事例を紹介。

(2)伊藤忠商事

澤瀉氏は、15年前から試行錯誤しながら取り組んできたダイバーシティ施策の推移を説明。当初は、女性総合職などの数値目標を掲げたが、「厳しくとも働きがいのある会社」への改革を進めるため、2010年に廃止。朝型勤務や「げん(現場)・こ(個別)・つ(つながり)改革」、脱スーツ・デーなどを導入し、職場全体の生産性向上に向けた取り組みを進めているとした。

(3)寿芳会芳野病院

廣底氏は、ワーク・ライフ・バランスの充実を目指した15年間の取り組みとして、57種類の勤務シフト制度や職員の10%が利用する常勤短時間勤務制度などを紹介した。スムーズに導入できた秘訣として、トップが信念を持って進めたこと、職員の声に耳を傾けたこと、中小規模を活かしてスピード感を持って決断したことを挙げ、その重要性を強調した。

【政治・社会本部】