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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年2月22日 No.3351 財政健全化に向けて~これまでの評価と今後の課題 -慶應義塾大学の土居教授から聞く/経済財政委員会財政改革部会

経団連の経済財政委員会財政改革部会(太田純部会長)は1月30日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、慶應義塾大学経済学部の土居丈朗教授から、1月22日に内閣府が公表した「中長期の経済財政に関する試算」を踏まえ、今後の財政健全化のあり方について説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 中長期試算の見方

新しい試算上、名目3.5%の「成長実現」ケースでは、従来の2025年度から27年度にプライマリーバランス黒字化の実現が後ろ倒しになっている。その要因は、消費増税の使途変更に伴う1.7兆円の歳出増に加え、成長率の下方修正を受けた自然増収の減少に伴う収支悪化とされている。ただし、歳出側の試算値は、あくまで機械的に伸ばしているだけで、過去3年間取り組んできた歳出の伸びを抑えるような将来の改革努力は織り込まれていない。

特に社会保障関係費について、足もとでは、歳出改革の目安を踏まえ、毎年5000億円の伸びにとどまっているが、今回の試算では、20年度以降、毎年1兆円程度増加している。これは厚生労働省による社会保障給付費の将来推計や高齢者人口の増加率の見通しを踏まえても、過大ではないかと考えている。

■ 今後期待できる医療・介護制度改革の成果

これまで議論してきた医療制度改革のうち、25年に向けた地域医療構想に基づく病床の機能分化、医療費適正化計画の改訂については、関係者間で合意がすでに取れており、今後、具体的な進捗が見込まれる。

入院にかかる病床の機能分化では、地域ごとにデータに基づき医療機能別に必要病床数を積み上げた結果を踏まえ、高度急性期からニーズの強い回復期や慢性期の病床へのシフトが進むことで、25年段階では入院医療費の伸びを相当程度抑えることが可能と考えている。外来に関しても、医療費適正化計画を着実に実行することで、後発医薬品の使用促進、重複・多剤投薬の是正等が図られ、6000億~8000億円程度、伸びを抑制できるとの数字が示されている。

介護分野では、要介護度の重い人への対応の必要性に加え、要介護認定率や1人当たり介護費の地域差をみても軽度者に対する給付の適正化が課題となっている。18年度から要支援1・2を対象に予防給付の地域支援事業への段階的な移行が実施され、予防給付の伸び率を従来の5~6%から3~4%にとどめることが可能である。さらに、残された課題として、21年度からの新しい介護保険事業計画に向けて要介護1・2にも対象を拡大することが求められる。

■ 歳出改革を進めることで早期のプライマリーバランス黒字化は可能

過大な社会保障関係費の伸びを厚労省の将来推計並みに見直し、今後の医療・介護制度改革の効果の発現を見込むことだけで、消費税率を10%超にすることなく、23年度にもプライマリーバランス黒字化は可能とみている。

さらに、年金課税の強化を含む19年の年金財政検証を踏まえた追加策、少子化のペースにあわせた教員の総額人件費の削減、公共事業費の効率化など歳出改革を行えば、黒字化は22年度に前倒しすることも可能である。

【経済政策本部】

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