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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年4月26日 No.3360 人工知能は人間を超えるか~ディープラーニングの先にあるもの -東京大学大学院の松尾特任准教授が講演/労働法規委員会

説明する松尾特任准教授

経団連は4月11日、東京・大手町の経団連会館で労働法規委員会(鵜浦博夫委員長)を開催した。東京大学大学院の松尾豊特任准教授から、「人工知能は人間を超えるか~ディープラーニングの先にあるもの」をテーマに講演を聞いた後、働き方改革関連法案およびその他の厚生労働行政の動向、「働き方改革 CHALLENGE 2017」の取り組みについて事務局から報告があった。講演の概要は次のとおり。

■ ディープラーニング革命

ディープラーニングは、人工知能自ら画像認識により対象の特徴(特徴量)を抽出し、それをもとに学習する技術であり、人工知能分野における50年来のブレークスルーといえる。従来の人工知能は、この特徴量の抽出に人間が大きく介在する必要があった。2013年以降、画像認識技術が進歩したことで、人工知能自ら特徴量を抽出する精度・スピードが向上し、学習・処理能力も大きな発展を遂げている。ディープラーニングは人工知能が特徴量を抽出するための「眼」(画像認識技術)を持つようになった点で画期的な技術革新である。

■ 既存事業の発展と日本の新たな産業競争力へ

ディープラーニングにより人工知能が「眼」を持つことは既存産業に大きな変化をもたらす。例えば、農業におけるトマトの収穫作業や建設業における溶接作業などは、自動化の大きなニーズがあるにもかかわらず、人間による認識を必要としていたため、自動化できない作業だった。しかし、「眼」を持つ機械・ロボットの出現によりこれまで人間の介在を前提としていた作業の自動化・機械化の可能性が高まっている。

ディープラーニングにとって重要な画像認識技術は、アメリカ・中国といった海外企業の躍進が著しく、日本企業は後れを取っている。しかし日本企業が強みとしている機械・ロボットによるものづくりとディープラーニングを組み合わせることで、これから産業競争力を高めることは十分に可能である。例えば、自動車の自動運転や産業ロボットによる組立のように作業を自動化していくことで新たなプラットフォームをつくり上げることが重要となる。また、今後は従業員のストレスや労働時間のマネジメント、生産性向上にディープラーニングを活用することも可能となる。

■ 人材への投資

いま、ディープラーニングの分野では海外の若手研究者が大きな成果を挙げている。ディープラーニングに関する論文の引用数ランキングでは、上位はアメリカ、カナダ、中国の研究者が占めており、そのうち多くが20代後半から30代前半の若手研究者である。ディープラーニング人材は世界的に企業間で争奪戦が繰り広げられており、ランキングで上位30位以内に位置する人材の年収は数百万ドル、300位前後でも50万ドル程度と推定される。

一方で、日本においては人材への投資が十分にできていない。国内の企業や大学では、海外企業のように若手研究者に高額な報酬を提供することは難しい。また、国や企業が人工知能分野に予算を投じても、スーパーコンピューターの購入など既存設備への投資となってしまっている。ディープラーニングへの投資、人への投資を積極的に行い、事業展開を速やかに行うことが重要となる。

【労働法制本部】

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