Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年5月17日 No.3361  提言「持続可能な全世代型社会保障制度の確立に向けて―当面の制度改革に関する意見」を公表 -給付費の伸びの抑制に直接的な効果がある制度改革の着実な実行を

経団連は5月15日、提言「持続可能な全世代型社会保障制度の確立に向けて―当面の制度改革に関する意見」を公表した。

「団塊の世代」が75歳以上となり始める2022年以降の制度の持続性の確保と保険料負担の抑制に向けた、今後の社会保障制度改革に関する具体的な考え方を取りまとめた。

■ 今後の制度改革のあり方

政府の集中改革期間(2016~2018年度)における取り組みでは、社会保障関係費の伸びに関する「目安」は達成された。しかし、財源の大宗は薬価の引き下げ、所得の高い現役世代や大企業に対する保険料負担増であったことに留意が必要である。

新たな財政健全化計画においても、社会保障関係費の「目安」を設定し、その水準は、中間評価年までの間は、これまで以下とすべきである。その達成に向けて、高齢者層への給付の見直しをはじめ、給付費の伸びの抑制に直接的な効果がある改革に速やかに取り組むべきである。

■ 2018年(年度)中に結論を得るべき改革事項

自己負担については、後期高齢者の窓口負担の原則2割への引き上げや、かかりつけ医以外の受診時の定額負担の導入の検討等が求められる。

薬剤に関しては、医療用医薬品のさらなるスイッチOTC化の推進とともに給付範囲の重点化が必要である。

保険料負担に関しては、医療、介護保険制度での総報酬割の導入を踏まえ、これ以上の安易な財政調整には断固反対である。

医薬品や医療機器に関する費用対効果評価の制度化に向けて、企業のイノベーションへの意欲を阻害しないような仕組みとすべきである。

また、子ども・子育て分野の対応として、児童手当の特例給付の速やかな廃止等が求められる。

■ 新たな財政健全化計画のもとの要検討事項

医療分野では、金融資産を勘案した高齢者層の負担の見直しや、効率的な提供体制への改革、医療機能の分化・連携をあわせて推進することが不可欠である。

介護分野では、介護費用等にかかる地域差是正に向けた取り組みの推進や、給付の効率化と「自立支援」「重度化防止」の推進等が求められる。

また、医療・介護における「見える化」を推進し、各種分析の前提となるエビデンスを収集していくことが重要である。

年金分野について、高齢者のなかでの再分配を重視し、真に必要な人への給付の重点化を図る観点から、在職老齢年金は現行の基本的な枠組みを維持すべきであること等を提言している。

なお、中長期的な課題として、高額な新規医薬品や医療技術への対応等を掲げており、国民的な議論の積み重ねが求められる。

■ 2025年以降の社会保障制度を見据えて

政府は、予算編成過程における社会保障制度改革の議論の透明性をさらに向上させるべきである。経済界としても、改革の進捗状況等に対するチェック機能を一層強化していきたい。

足もとでの改革の着実な取り組みを前提としつつ、2025年以降を見据えて、制度横断的かつ税制も含めた視点から、全世代型社会保障制度の確立に向けて議論を進めるべきである。その際、社会保障の安定財源の確保に向けて、税率10%超への消費増税も有力な選択肢の1つとして国民的な議論を喚起すべきである。

【経済政策本部】