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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年5月31日 No.3363 第127回シンポジウム「データ利活用と産業化」を開催 -21世紀政策研究所

21世紀政策研究所(三浦惺所長)は5月9日、経団連会員企業の代表者ら約250名の参加を得て、研究プロジェクト「データ利活用と産業化」(研究主幹=越塚登東京大学教授)のシンポジウムを開催した。同プロジェクトは、日本の産業界でデータの利活用がうまく進んでいないとの問題意識が動機となって、大学、企業等の専門家を中心に立ち上げられ、外部有識者やデータを活用したビジネスモデルを確立した企業などを招きながら研究会を開催し、さまざまなケースを議論し、検討を進めてきた。

■ 変革管理の重要性

はじめに越塚研究主幹から、1年半にわたるプロジェクトの概要やその成果を報告。同じ社内にもかかわらずデータベースの増築型開発により事業間のデータ連携がとれないという事例や、過疎化の進む地方で業務効率化に迫られた結果、IT活用による経営改善がなされたという成功例が紹介された。

また、収集・蓄積されたデータの解析結果を現実のビジネスに活かすには、変革管理(Change Management)の考え方のもと組織の変革が必要であることを強調。ITを利活用した科学的手法を適用する経営の有効性についても説明があった。そして、高度な技術よりも、シンプルな遠隔制御などを利用した「見える化」など、“当たり前”のことを着実に実行すれば、事業において劇的な改善が見込める現場が多数残っていると指摘した。

越塚研究主幹はまた、日本は他国に比べて若い世代の理系専攻率が低く、工学系の学生の割合は必ずしも高くないが、三千以上の大学が参加した今年の大学対抗の国際プログラミングコンテストで東京大学が4位に入賞するなど、プログラミングの分野では日本は世界ランキングの上位に位置しており、今後の希望はあると述べた。

■ データ利活用をめぐるさまざまな動き

続いて3名のプロジェクト研究委員から、研究会でまとめた最終報告書におけるそれぞれの執筆内容を中心に説明があった。

坂下哲也研究委員(日本情報経済社会推進協会常務理事)からは、研究プロジェクトでヒアリングしたもののなかから、診療報酬請求(レセプト)データの収集・解析が、医療費の適正化に大きく寄与した事例の紹介があった。また、自治体が住民の異動にかかわるデータの活用を通じて、バスなどの効率的な運行や最適配車に加え、客貨混載など地域交通の最適化プラットフォームの構築を試みている例についても説明があった。

若目田光生研究委員(日本電気データ流通戦略室長)は、研究プロジェクトの大きな柱の1つであるパーソナルデータの利活用について、プライバシー保護との両立の観点から説明。また、その適正な利活用・流通のために、パーソナルデータストア、情報銀行、データ取引市場が産官学で検討されている現状についても説明があった。

矢野和男研究委員(日立製作所フェロー)は、データと人工知能(AI)は切り離せない関係にあり、AIが急速に発展する時代には、標準化・ルール指向といった従来の成功体験から脱皮し、多様性の重視やアウトカム指向に変わっていく必要があると述べた。

後半のパネルディスカッションでは、EUの一般データ保護規則(GDPR)の日本企業への影響や、国内の法制度整備の動向、事業の現場におけるAIの活用方法などについて活発な議論がなされた。

◇◇◇

同研究プロジェクトの報告書は、近日刊行予定である。

【21世紀政策研究所】

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