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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年9月13日 No.3376 Society 5.0を目指した農研機構の取り組みについて聞く -農業活性化委員会

説明する久間理事長

経団連(中西宏明会長)は8月29日、東京・大手町の経団連会館で農業活性化委員会(十倉雅和委員長、佐藤康博委員長)を開催し、農業・食品産業技術総合研究機構の久間和生理事長をはじめ、同機構幹部から農業・食品分野でのSociety 5.0を目指した取り組みについて聞くとともに種々懇談した。久間理事長の説明の概要は次のとおり。

わが国農業は、従事者数の減少、高齢化により、担い手不足が進行するとともに、農業生産額、自給率は減少傾向にある。一方、世界に目を向けると、人口増により、食市場は大幅な拡大が見込まれ、輸出の好機である。

政府においても、第5期科学技術基本計画が示した未来の産業構造と社会システムのあるべき姿である「Society 5.0」を打ち出し、その実現に向けた具体的な取り組みとして、「統合イノベーション戦略」を策定している。同戦略において、特に取り組みを強化すべき分野として農業が位置づけられ、スマート農業技術の1000億円以上の市場獲得などが掲げられた。

こうしたなか、農研機構の目標を見直し、農業を強い産業として育成し、政府の経済成長政策に貢献することで、農業・食品分野で科学技術イノベーションを創出し、農業の産業としての自立を牽引するとした。また、重点的に進める研究開発課題として、データ駆動型革新的スマート農業の創出やスマート育種システムの構築と民間活力活用による品種育成など、6つを挙げている。なかでも、農業・食品分野でのSociety 5.0ということでは、スマートフードチェーンに取り組み、育種から生産、加工・流通、消費に至るプロセスを人工知能と農業データ連携基盤で支え、各プロセスのデータを収集して解析、生産性向上や無駄の排除、ニーズとシーズのマッチングなどの実現を目指している。また、スマート農業では、ロボットトラクターの運用、先端基盤技術では、農業データ連携基盤の構築に取り組んでいる。

今後は、すべての研究課題のロードマップ改訂、時期の明確化など、研究開発成果のスピーディーな実用化、産学官連携など、研究開発強化を図る。また、理事長直下の産学連携室の設置やビジネスコーディネーターの配置により、産業界のニーズと農研機構の技術をつなげるほか、ニーズに合った研究開発を推進していく。

◇◇◇

続く懇談では、石塚邦雄副会長から、農研機構の研究開発成果の普及にあたり、農業界側の意識改革の必要性が指摘された。これに対し久間理事長は、全農や公設試験研究機関などとの役割分担を明確にし、技術の浸透を図りたいとした。

最後に、十倉委員長は、「人口減少が進むなか、付加価値の創出や生産性の向上を図るべく、技術開発を進めていく必要がある。そのためには、農研機構の後押しが重要であり、引き続き連携を強化していきたい」と締めくくった。

なお、同会合では、懇談終了後、農業の先端・成長産業化に向けた提言案を審議・承認した。

【産業政策本部】

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