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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 週刊 経団連タイムス 2018年9月27日 No.3378 三権分立均衡の崩れが生む政治の混乱 -ワシントン・リポート<47>

この1週間、ワシントンはカバノー連邦控訴裁判事の最高裁判事承認で揺れに揺れている。51対49という僅差ながら共和党が上院の多数派を占めており、すでに上院司法委員会の公聴会もほぼ無傷で乗り越えていたことから、反トランプの民主党の反対も空しく、承認はほぼ確実とみられていた。ところが、高校時代のカバノー氏に性的暴行を受けたとの告発文が9月13日に明らかにされ、16日に告発者も公表されて上院は大混乱に陥った。

民主党側は、MeToo運動と結びつけ、勇気ある告発者を全面的に信じなければ女性蔑視となることを主張して、共和党の拙速な対応を批判し、FBI捜査を経るまで同委員会における議決の延期を求めた。一方、共和党側は36年前に起きたとされ、日時や場所も特定できず、裏づける証人もいない告発のみによって、長年培われてきたカバノー氏の名誉に泥を塗ることはDue Process(法の適正な手続き)や「疑わしきは罰せず(Innocent Until Proven Guilty)」という大原則に反するとし、あわよくば中間選挙後まで承認を遅らせたい民主党の牛歩戦術として反発している。また、27日に告発者であるフォード教授とカバノー氏双方が出席する司法委員会公聴会が予定された矢先、23日には別の女性によるカバノー氏の大学時代の性的不適切行為疑惑が報道されたが、今のところ、同様に確証材料に乏しいものとして事態は混迷を極めている。

1人の最高裁判事の承認においてここまでなりふり構わぬ“焦土作戦”が行われるのは、本来の三権分立の均衡が崩れていることが原因だと、ベン・サッス上院議員(共和党・ネブラスカ州)は述べている。サッス上院議員は、上記告発が公表される前の4日の承認公聴会初日に、「米国憲法は連邦議会を政治の中心に定めているが、議会はその立法責任を回避するように行政府に政策運営ルールや規制の策定というかたちで権限を委譲してきた。その結果、政治責任の所在が不明瞭になり、国民は最高裁を代理政争の場とみるようになった」と発言した。本来テクニカルな法律解釈をするはずの最高裁が、今や国民を二分するような妊娠中絶や銃規制などの道徳・社会問題を決める立場になっており、米国政治において、その存在が大きくなり過ぎているという見方もある。

司法のみならず、行政府への過度の権限移譲を正そうとする動きも議会内にはある。通商拡大法232条に基づく行政府の関税賦課決定に対して議会の不承認権限を与える法案や、さらに行政府による一方的な通商施策はすべて議会の承認を要するとした法案も提出されている。

最高裁判事の承認がここまで紛糾するのは、トランプ時代の激しい党派対立だけの理由ではなく、そのずっと以前にさかのぼる米国における三権分立の根深い問題を反映している。

【米国事務所】

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