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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 週刊 経団連タイムス 2018年12月13日 No.3389 中間選挙後のアメリカ政治の行方 -21世紀政策研究所 解説シリーズ/21世紀政策研究所研究副主幹(上智大学教授) 前嶋和弘

前嶋研究副主幹

■ 中間選挙の法則

アメリカの中間選挙には法則めいたものがある。主なものでいえば、(1)大統領の政党(与党)は議席を減らす(2)投票率は大統領選挙の年に比べて極めて低い(3)争点は経済(景気)がトップ――などだろう。さらに、中間選挙の結果をめぐって特に近年の場合、(4)その後の政策運営を大きく変えるという傾向にある。

このうち、今回の2018年の中間選挙の結果をみると、(1)から(3)については、どれも完全に当てはまっているとはいいがたい。まず、(1)については大統領の政党は下院では平均29、上院では同7つの議席を失っているが、今回の場合、共和党は上院を死守するだけでなく、2つの議席を増やしている。また、(2)については確かに大統領選挙の60%ほどの投票率には及ばなかったが、フロリダ大学のマイケル・マクドナルド准教授の推定では、4年前よりも13ポイントも高く、49.7%となっている。この投票率はまだ低いようにみえるが、アメリカの選挙で10ポイントも投票率が回復するような例は、筆者は聞いたことがない。さらに、(3)については、争点は経済ではなく、医療保険や移民問題が経済以上に注目されている。

■ トランプ氏への反発

これはいったい何なのだろうか。(2)と(3)については、おそらく「トランプ大統領的なもの」へのレファレンダムとして今回の選挙が大きく注目を集めたことにほかならない。対立をあおるトランプ氏に疲れ、反発する有権者が民主党を支持したのではないだろうか。実際に野党・民主党の方は躍進した。下院で「過去の野党平均」を大きく超える39議席(12月3日現在、残り1議席が未決)を獲得した。知事選でも民主党の知事が7人増えた。

「上院で共和党が多数派を維持した」と上述したのに矛盾するように思われるかもしれない。しかし、今回の選挙では上院の方はたまたま改選35議席のうち、26が民主党の議席だったこともあり、現在の第115議会が2議席差で共和党が上回っているため、民主党が多数派を奪還するのは35議席中28議席が必要となる。それはそもそも不可能なのはかなり前からわかっていた。

通常、これほどの「敗北」なら、犯人捜しや、党の立て直しのための反省などが必要になるのだが、共和党側には真剣な議論が生まれてきていない。共和党の「明らかな敗北」が目立っていないのは、トランプ大統領のPRのうまさに尽きる。共和党候補が苦戦しながらも逃げきったインディアナ、ジョージア、テキサスなどの各州の上院議員選を決めたのがトランプ氏の応援演説だった。さらには、選挙直後、上院で多数派を維持したことからトランプ大統領は「大勝利だった」と喧伝した。この迫力に民主党側の明らかな勝利のイメージが消えてしまっている。

■ 難しい政策運営の可能性

PRのうまさは光ったが、トランプ大統領には難しい政策運営が待っている。法則の(4)にあるように、過去の3代の大統領はいずれも中間選挙で足をすくわれている。クリントン(1994年)、ブッシュ(2006年)、オバマ(2010年)の3氏のいずれも、カッコ内で示した中間選挙の年までは自らの政党が上下両院で多数派を占めていたが、中間選挙で上下両院もしくは下院の多数派を野党に奪われたことで、政策運営が行き詰まった。

クリントン氏の場合、中間選挙を経て共和党に妥協的な路線に舵を切らざるを得なかった。それを象徴する1996年の一般教書演説の「大きな政府の時代は終わった」という言葉は、民主党内のリベラル派からは厳しく批判された。2006年の中間選挙後のブッシュ政権は議会民主党が連日開いた公聴会でイラク戦争の過ちを糾弾され、政策運営どころではなかった。オバマ氏の場合、最初の2年には医療保険改革に代表される大きな政策を実らせたが、その後の「何もできなかった大統領」という辛辣なニックネームは最初の中間選挙後の6年間のものだ。

トランプ大統領の政策運営がどうなるのか。来年1月からの第116議会が大いに注目される。

【21世紀政策研究所】

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