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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年2月7日 No.3395 スマートシティ実現に向けた取り組み聞く -都市・住宅政策委員会企画部会・PPP推進部会

経団連は1月18日、都市・住宅政策委員会企画部会(安達博治部会長)・PPP推進部会(竹内俊一部会長)合同部会を開催し、Society 5.0時代の東京圏のあり方に関する提言の取りまとめに向けて、三井不動産柏の葉街づくり推進部の加藤智康部長ならびに日建設計総合研究所の山村真司主席研究員から、スマートシティ実現に向けた取り組みについて聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 三井不動産「柏の葉スマートシティの取り組みと課題」

当社は、柏市、東京大学、千葉大学等と共同で公民学が集う街づくり拠点「柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)」を創設し、都心から25キロメートル圏に位置する柏市の郊外部において、新規開発プロジェクトとして「柏の葉スマートシティ」に取り組み始めた。これは、「環境共生」「健康長寿」「新産業創造」をテーマに、世界の未来像をつくる、今までにない課題解決型の街づくりである。2005年につくばエクスプレスが開通し、第1ステージとして、最先端街区ゲートスクエアを中核とした駅前の開発に取り組み、現在第2ステージを推進している。

「環境共生」では、スマートグリッドにより日本初の街区間電力融通を実現。「健康長寿」では、学術機関や市民の活動を通じた最先端の研究成果も導入し、疾病予防に向けた医療・健康サービスを提供している。「新産業創造」では、柏の葉オープンイノベーションラボ(KOIL)において、専門家による創業支援や交流イベントなどを実施している。

第2ステージでは開発区域を広げ、イノベーションキャンパスゾーン、駅前中核ゾーン、大学共生ゾーンの3ゾーンに分けて、街づくりを進めている。イノベーションキャンパスゾーンでは、水と緑にあふれた憩いの場の整備や賑わい施設の誘致を通じて、職、学、住、遊の用途を複合させるミクストユースの街づくりを推進している。駅前中核ゾーンでは、居住者の多様なニーズを満たす共用施設の整備やさらなる賑わいの創出により、新たな交流を生み出す取り組みを進めている。大学共生ゾーンでは公民学連携を一層加速させる施設や新たな人の流れをつくる道路の整備により、街と大学・研究所との連携・共生に取り組んでいる。

柏の葉の街づくりはオープンイノベーションを重視し、多彩な関係者の参画を得て進めている。今後の課題は企業誘致であり、最新のテクノロジーも取り入れつつ、引き続き人が主役のスマートシティをつくっていきたい。

■ 日建設計総合研究所「スマートシティ実現に向けた取り組みと課題」

スマートシティ化やICT化は、都市問題解決のよいツールになる。日本のスマートシティやスマートコミュニティは、1998年の「まちづくり3法」を端緒に2000年ごろから始まった。当初の環境・エネルギー関連から、Society 5.0の実現やSDGs(持続可能な開発目標)の達成も取り込みつつ、データ利活用やICTによる生活の質(QOL)向上へと変化している。その手法は都市の規模によって異なり、対象はコミュニティー、都市、広域など幅広い。事業化を意識しつつ、建築・街づくりの視点から適切なインフラ技術を包括的、体系的に整理し、スマート化の範囲とコンセプトを明確化する必要がある。また、全体を管理するエリアマネジメントシステムも重要である。

スマートシティの国内事例では、政府・地方公共団体のエネルギーやデータ利活用分野での取り組み、民間では柏の葉や藤沢SSTがある。海外では、10年以降、QOL向上を中心に欧米やアジアなどで行われている。

スマートシティの実現に向けて、多角的な視点から体系的ソリューションを見いだすプロセスが重要である。スマート化によって、中長期的に誰が便益を享受するのかを検討し、間接的な便益の獲得方法を設定することも大事である。

【産業政策本部】

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