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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年3月7日 No.3399 地方分権時代の規制改革のあり方と鳥取県の取り組み聞く -行政改革推進委員会規制改革推進部会

説明する平井鳥取県知事(左)と田中新潟大学教授

経団連は2月1日、東京・大手町の経団連会館で行政改革推進委員会規制改革推進部会(竹村信昭部会長)を開催した。新潟大学の田中良弘准教授、鳥取県の平井伸治知事から、地方分権時代の規制改革と鳥取県の取り組みについて聞いた。概要は次のとおり。

■ 地方分権時代の規制改革(田中氏)

規制改革との関係では、地方分権改革は、(1)規制緩和の手段や東京一極集中の是正策と認識され経済界も分権を強く推進した「期待期」(1980年代)(2)分権自体が独立の目的となった「転換期」(90年代~2000年代)(3)経済活動の広域化や情報通信技術の進展を背景に、地方によって異なる規制が問題視され始めた「反動期」(10年代)――の3つの時期に分けられる。

地方によって異なる規制の問題に関し、政府の「規制改革推進会議」は、規制の内容(許可基準等)の是正については地方分権を尊重して自治体の自主的な取り組みに委ねつつ、地方分権の精神に反しないと考えられる行政手続における書式・様式の統一化・標準化に焦点を当てて取り組みを実施した。例えば、自動車保管場所証明申請書については、各都道府県警察がそれぞれ独自の様式を定めており、広域的な経済活動を行う事業者にとって効率化の妨げとなっているとの指摘があったが、警察庁と協議を重ねた結果、他の都道府県警察の様式で申請が行われた場合であっても当該申請を適切に受け付けて処理することや、国家公安委員会規則に定めのない添付書類の提出を求めないこと等の措置が講じられることとなった。

地方における規制改革の課題として、(1)自治体の取り組みに温度差があること(2)自治体間の規制の差異が問題として認識されにくいこと――が挙げられる。今後の対応として、(1)鳥取県の取り組みのような好事例の横展開や改革に向けたインセンティブの付与(2)問題事例の収集・分析による産学官での問題意識の共有――が有効と考えられる。

■ 鳥取県における規制改革・行政手続コスト削減の推進(平井氏)

鳥取県の人口は約56万人である。小規模のため、「スモールメリット」を活かしてさまざまな改革を迅速に進めることができる。常設型の県民投票制度の導入や、監査調書等を含む積極的な情報公開、県政参画電子アンケートをはじめとする多様な広聴の取り組み等、他の都道府県にない特徴的な施策を講じている。危険ドラッグの全面禁止を規定した条例改正は、他の都道府県や国の法改正にも影響を与えており、鳥取県が国の仕組みを変えた事例といえる。

行財政改革も積極的に推進しており、(1)予算編成における一発査定の導入(時間外労働6割減)(2)管理職への女性登用(2割、都道府県1位)(3)水力発電施設の改修・運営におけるPFI・コンセッション方式の導入検討(全国初)(4)カイゼン活動の導入による働き方改革(2013~17年の累計で約3.7万時間削減)(5)岡山県との情報セキュリティクラウドの共同構築・運用(約7.6億円の調達コスト削減)――等の成果を挙げている。

規制・行政手続改革も重視している。規制改革については、「鳥取県規制改革会議」を設置して県民の提案を受け付け、道路占用料の減免措置に関する添付書類の簡素化等の規制・制度の見直しにつなげている。行政手続改革では、補助金や許認可手続に要する県民や企業の作業時間を30%以上削減し、わずか1年で国の目標(20%)を上回った。具体的には、(1)電子申請システムの活用(手数料のクレジットカード納付にも対応)(2)添付書類の削減や申請書の様式改善(3)行政内部での添付書類の共有④複数手続の一本化による処理期間の短縮――等で効果を挙げている。特に電子申請システムは、閉庁時間帯の利用率が全体の4割を超えており、役所を訪問せずに済む効果は大きい。

今後も規制改革・行政手続改革を進め、地域活性化や官民の業務改革に取り組んでいきたい。

【産業政策本部】

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