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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 週刊 経団連タイムス 2019年5月30日 No.3409 日本農業のポテンシャル<下>~生産性の高い農業経営をつくるには -21世紀政策研究所 解説シリーズ/21世紀政策研究所研究主幹(宮城大学名誉教授) 大泉一貫

大泉研究主幹

■ 経営システムの改革が必要

これからの日本農業のポテンシャルは、生産性の高い経営によって維持される。生産性を高めるというと、ICTを使ったスマート農業や大型機械化など、技術革新が思い浮かぶかもしれない。確かに大切なことだし、効果的でもある。ただ、もっとズームを引いてみると、生産性の高い経営には、ある種の共通した特徴がある。それは事業規模の拡大や作業工程の変革をはじめ、何らかの経営システムの改革を行っているということである。しかもその契機は、すべての経営とはいわないものの、多くが「フードバリューチェーン」からの要請によるものである。

■ アライアンス、マーケット・インからフードバリューチェーンへ

そのフードバリューチェーンだが、食品産業は、農産物生産から顧客に商品を届けるまでの産業バリューチェーンを構成している。農業も基本的にフードバリューチェーンの一環を構成しているが、チェーン上にあるとの認識は弱く、制度的要因もありむしろ孤立状況にあるといえた。

そこへこの10年来、川下サイドの事業者のニーズに応えようと、マーケットに関心を持つ農業経営者が増加してきた。直売所やEC、さらには契約栽培等、何らかの手段でマーケットへのアクセスを試み、契約、連携、アライアンス等で川下事業者とさまざまな信頼関係を模索するようになった。生産体制は必然的にマーケット・インとなり、農業者の関心はより川下へと広がり、「フードバリューチェーン全体」を視野に入れるようになる。こうしたなかから生産性や付加価値の高い農業経営が登場している。生産性が高くなるのは、フードチェーンに、経営システム変革などを要請する経済性があるからである。

食品産業の市場規模とフードバリューチェーン

■ フードチェーンの経済性~チェーンの最適化は農業イノベーション

農業の市場は11兆円だが、フードチェーン全体でみれば117兆円の市場が広がっている。農業者には「大きな市場」が広がり、規模拡大の可能性が増す。またチェーンには、収益性や利幅の高い事業などさまざまな事業が存在している。これを「プロフィットプール」と呼んでいるが、農業者にとっては加工や販売事業が視野に入り、6次産業化や多事業化など、事業領域の拡大可能性が高まり、農業のビジネスチャンスが広がることになる。

さらに、チェーンでは「最適化」が絶えず図られている。農産物が顧客に届くまでのプロセスには、さまざまな無駄や非効率などのボトルネックがあり、その解決策や合理化策が常時検討されている。ボトルネックは各所にあるものの農業に起因するケースが特に多い。フードチェーン全体を視野に入れ始めた農業経営者は、アライアンスを組む他事業者からの支援も受けながら、事業を拡大するとともにボトルネックの解消を目指し、新たな生産・出荷体制を築こうとする。こうして経営システムの改革が進み、「チェーンの最適化」はそれ自体が「農業のイノベーション」を生む。

こうした農業を私は「フードチェーン農業」と呼んでいるが、フードチェーン全体を視野に入れる「入れ方」やチェーンの「つなぎ方(アライアンスの組み方)」、さらに「経営システムの改革の仕方」は、今のところ多様である。さらに早く生産性の高い農業経営を生み出し、日本農業のポテンシャルを高めるには、農業は他の産業との間でもっともっともまれる必要がある、ということはいえると思う。

【21世紀政策研究所】

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