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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年6月20日 No.3412 IASBのフーガーホースト議長から最近の国際会計基準をめぐる動向聞く -金融・資本市場委員会企業会計部会

講演するフーガーホースト議長

あいさつする鶯地理事

経団連は5月22日、東京・大手町の経団連会館で金融・資本市場委員会企業会計部会(野崎邦夫部会長)を開催し、IASB(国際会計基準審議会)のハンス・フーガーホースト議長から、最近の国際会計基準をめぐる動向を聞くとともに意見交換を行った。概要は次のとおり。

■ 最近の国際会計基準をめぐる動向

(1) 基本財務諸表プロジェクト

基本財務諸表プロジェクトでは、現在IFRS(国際財務報告基準)に定められていない「損益計算書における段階的な利益の表示」について、「営業利益」と「財務・法人所得税前利益」などを定義して、これら段階利益を開示することによって、比較可能性や規律を高めることを検討している。「営業利益」には、投資・財務活動を除いた主たる事業活動から発生する利益のすべてが含まれるよう定義する。これに伴い、現在使用されている「IFRSで定義されない業績指標」を企業が引き続き使用する場合には、「IFRSで定義される段階利益」との調整過程を注記において説明する必要がある。

(2) 「のれん」の会計処理

のれんの価値が時間の経過とともに減少していく明確な根拠を見いだすのは難しく、のれんの会計処理には正解がない。のれんの価値が著しく減少した場合のみに減損処理を行う現行のIFRSでは、減損処理のタイミングが遅れて、その金額も過少になるという「too little, too late」の問題を抱えている。

足元では、のれんの残高が世界的に積み上がっており、仮に経済危機が発生した場合に、一度に巨額ののれんが減損処理されるおそれがある。その際に、会計基準設定主体として、一瞬にして蒸発するのれんに関して問われることを懸念している。

今年中の公表を予定している「のれんの会計処理に関するディスカッション・ペーパー」では、現在の基準がうまく機能していないことを認めたうえで、のれんの償却処理の再導入などについて、「開示の改善」と「会計処理の簡素化」の観点から分析する予定である。

<意見交換>

意見交換では、野崎部会長が、のれんの会計処理について、今後の議論では「too little, too late」への対応を重点的に検討すべきだと強調した。このほか出席者からは、「経済危機で巨額の減損が顕在化すると、会計基準としてのIFRSの信頼性が大きく損なわれる」「米国基準においても、のれんの償却処理の導入に向けた議論が進みつつある。IASBでの今後の議論に期待する」といった意見が出された。

◇◇◇

フーガーホースト議長の講演に先立ち、IASB理事を6月末に退任する鶯地隆継理事が退任あいさつを行った。鶯地理事は、企業会計部会に参加し議論してきたことが基礎となり、IASB理事としての8年間を全うできたこと、在任中は会計基準が企業行動に与える影響や世界的な視野からの会計基準の開発の必要性を常に念頭においてきたことなどに言及した。

【経済基盤本部】

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