1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2019年7月4日 No.3414
  5. 重要労働判例説明会を開催

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 週刊 経団連タイムス 2019年7月4日 No.3414 重要労働判例説明会を開催 -メトロコマース事件・東京高裁判決について解説

説明する平野氏

経団連は6月14日、東京・大手町の経団連会館で「重要労働判例説明会」を開催、経営法曹会議所属の平野剛弁護士(杜若経営法律事務所)から、「メトロコマース事件・東京高裁判決」について解説を聞き、意見交換を行った。会員企業から約80名が参加した。解説の概要は次のとおり。

◇◇◇

メトロコマース事件は、正社員と売店業務に従事していた有期契約社員との労働条件の相違が、不合理なものとして労働契約法20条に違反するかが争われた事案である。

東京高裁は、平成31年2月20日に判決を言い渡した。第一審の東京地裁は、原告1名の早出残業にかかる部分を除いて、原告の請求を棄却していた。しかし東京高裁は、争われていた項目のうち、本給・資格手当、賞与は不合理でないとしたが、住宅手当、退職金、褒賞、早出残業手当は不合理(違法)と判断し、これが特に退職金の相違を不合理と認めた裁判例として大きく報道された。

東京高裁は、「長期雇用を前提とした正社員に対する福利厚生を手厚くし、有為な人材の確保・定着を図る等の目的をもって、正社員に対して退職金制度を設ける一方、本来的に短期雇用を前提とした有期契約社員に対して退職金制度を設けないという制度設計をすること自体は、人事施策上一概に不合理とはいえない」とした。しかし、本件会社では、有期労働契約は、原則として更新され定年が65歳と定められており、実際に控訴人のうち2名は定年まで10年前後の長期間にわたり勤務している。したがって、少なくとも長年の勤務に対する功労報償の性格を有する部分にかかる退職金(正社員と同一基準により算定した額の少なくとも4分の1)すら支給しないことは不合理であるとしたのである。しかし、高裁判決は、なぜ4分の1なのかが不明であり、正社員と有期契約社員との職務内容・変更範囲の違いに伴う貢献・功労の違いについての考慮がみられない等の疑問がある。

実務上の留意すべき点として、まず今回の高裁判決は、メトロコマースという個社の制度についての判断を示したもので、企業の制度の内容次第で結論が異なり得るものであって、未確定の事例判例にすぎないということである。そして、労契法20条違反が争われている事件で、「日本郵便事件」など立て続けに高裁判決が出たこともあり、本件のメトロコマース事件も含めて、最高裁があらためて何らかの判断を示すと思われる。こうしたことから、今回の高裁判決を踏まえて直ちにこれに沿った退職金制度の変更を考えるまでの必要性はないであろう。しかし、「ハマキョウレックス事件」の最高裁判決(最高裁平成30年6月1日判決)を踏まえれば、提供する労務の性格や属性に着目して単一の趣旨で支給する手当(本件でいえば早出残業手当)については、その趣旨が有期契約社員にもあてはまれば、正社員との間の相違が不合理と認められるおそれが大きい。そこでそのような手当については、見直しを検討することが望ましい。

【労働法制本部】

「2019年7月4日 No.3414」一覧はこちら

「週刊 経団連タイムス」一覧はこちら