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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 週刊 経団連タイムス 2019年8月8日 No.3419 第118回経団連労働法フォーラム

経団連および経団連事業サービスは7月25、26の両日、経営法曹会議の協賛により「第118回経団連労働法フォーラム」を東京・大手町の経団連会館で開催した(前号既報)。「パートタイム労働者、有期雇用労働者に対する雇用管理」「これからの派遣労働者活用のあり方」について、関連する法律や裁判例をもとに企業実務上の対応策を経営法曹会議所属弁護士が報告した。また、「女性活躍推進法等改正法の概要及び女性活躍推進・ハラスメント防止策」と題して、厚生労働省雇用環境・均等局の森實久美子雇用機会均等課長が女性活躍の現状、ハラスメントの現状、労働政策審議会の建議の概要、改正法の概要などを説明。女性をはじめとする多様な労働者が活躍できる就業環境を整備するため、パワーハラスメント防止等のための事業主の雇用管理上の措置義務等の新設、セクシャルハラスメント等の防止対策の強化等の措置を講じることが改正法の趣旨だと述べた。弁護士報告の概要は次のとおり。

[報告Ⅰ]
「パートタイム労働者、有期雇用労働者に対する今後の雇用管理」
弁護士 平野剛氏(杜若経営法律事務所)

■ 法改正の概要

昨年成立したパート・有期雇用労働法は、大企業では2020年4月1日から、中小企業では21年4月1日から施行される。
同法は、パート・有期雇用労働者の労働条件の決定・待遇に関し、正社員との均衡待遇や均等待遇等を定め、パート・有期雇用労働者への教育訓練の実施義務・福利厚生利用機会の付与義務、労働条件・待遇等に関する説明義務、パート・有期雇用労働者から正社員への転換推進措置義務や労働局の助言、指導、勧告等の管理体制等を規定している。

■ 均等待遇・均衡待遇

正社員と職務内容が同一で、かつ雇用関係が終了するまでの全期間において、正社員の職務内容および配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるパート・有期雇用労働者が、均等待遇(差別的取り扱い禁止、パート・有期雇用労働法9条)の対象となる。このようなケースは限定的であるが、定年後、定年前の正社員と人材活用の仕組みを変えずに、有期またはパートで再雇用しているケース等で問題となり得る。
他方、正社員とパート・有期雇用労働者との間で待遇の相違がある場合、不合理な相違が禁止される(均衡待遇、パート・有期雇用労働法8条)。不合理かどうかは、(1)職務の内容(2)職務の内容および配置の変更の範囲(3)その他の事情――を考慮して判断される。この点に関し、厚生労働省の不合理な待遇の禁止等に関する指針(ガイドライン)が示されており、違反した場合、待遇の相違が不合理と認められるなどの可能性がある。裁判例では、基本給、賞与、各種手当、退職金、休職・病気休暇の相違が不合理かどうかで争われている。

■ パート・有期雇用労働者への説明義務

事業主は、雇い入れ時や説明の求めがあったとき、パート・有期雇用労働者に、正社員との待遇差の内容や理由について説明する義務がある。

■ パート・有期雇用の終了

パート・有期雇用労働者の雇い止めについて、初回契約時から上限が設定・周知され適切に運用されていれば、更新の合理的期待が否定されるが、契約期間途中で上限が設定された場合には更新の合理的期待が直ちに否定されないこともある。また、不更新条項のある契約が締結された場合でも、裁判所は労働者の真意について慎重に検討する傾向にある。

■ 今後の制度の見直し

今後、パート・有期雇用労働者と正社員との相違の有無、理由を確認し、待遇の趣旨・目的に照らして、相違が不合理でないかの検討が必要である。パート・有期雇用労働者の待遇の向上が困難な場合、正社員の待遇を引き下げることもあろう。その場合は、労使間での慎重な協議が必要であり、代償措置等他の労働条件の改善も考えるべきである。
定年後再雇用者については、通勤手当、時間外手当の割増率などは均衡待遇との関係で、不合理と評価され得る場合がある。また、職務内容・人材活用の仕組みに違いがない場合は、均等待遇との関係でリスクがある。その場合、人材活用の仕組みを見直すか、それが難しい場合、定年後無期フルタイムで再雇用し第二定年を定めるか、定年を延長し、60歳以降の賃金水準が60歳到達前と異なる給与規程を導入することが考えられよう。

<質疑応答・討論>

質疑応答・討論では、「正社員とパート・有期雇用労働者との有給休暇、特別休暇の付与、住宅手当、賞与、割増率の差等の待遇差が不合理ではないか」等の自社の待遇差についての質問が多数あり、弁護士が各自の見解を示して説明した。

[報告Ⅱ]
「これからの派遣労働者活用のあり方」
弁護士 東志穂氏(第一芙蓉法律事務所)

■ 労働者派遣事業の現状と2015年改正法

派遣労働者数は総雇用者の2~3%で、2018年では約134万人である。派遣労働は専門性を活かした人材活用としてのニーズもあるが、需給調整的なニーズが多い傾向にある。
2015年改正法は、業務区分による規制を廃止し、派遣可能期間の上限を一律3年として、事業所単位・派遣労働者個人単位による規制とし、派遣元と派遣労働者の派遣労働契約が無期の場合の派遣可能期間の適用を除外した。

■ 2018年改正法の内容

2018年改正法は、「派遣先均等・均衡方式」「労使協定方式」のいずれかの方式により派遣労働者の待遇を確保することを義務化するものである。「派遣先均等・均衡方式」は、派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇を確保するもので、派遣先が書面の交付等により派遣元に比較対象者の賃金を含めた待遇情報を提供する。
他方、「労使協定方式」は派遣元が一定の要件を満たす労使協定を締結し当該協定に基づき派遣労働者の待遇を確保するものである。労使協定には、対象となる派遣労働者の範囲および職業安定局長通達で示される一般賃金の額と同等以上の賃金額となる決定方法等を定めなくてはならない。

■ 労働者派遣契約締結から終了時における派遣先の主な実務対応

派遣中の労働者の労働時間等の枠組みの設定は派遣元が行う。派遣先の従業員による派遣労働者へのセクハラ行為やパワーハラスメントについては派遣先が使用者責任を負うことがある。
なお、労働者派遣契約を期間満了で終了させることについては、法的制約はない。また、派遣先の都合による労働者派遣契約の中途解除が、直ちに不法行為上違法とされるわけではないが、一定の場合には、信義則上の配慮義務違反となるとした裁判例がある。

■ 派遣先の団交応諾義務の有無

派遣労働者の労働条件の決定は派遣元が行うものである以上、団体交渉の当事者は派遣元であって、派遣先は派遣労働者が加入する労働組合から団体交渉の申し入れがあっても、基本的に応じる義務はない。

■ 派遣先に求められる今後の対応

近時の法改正により、派遣先均等・均衡方式の場合の対応や派遣可能期間の遵守・延長の手続きなど派遣先に求められる対応が増大する。特に、望まない場面で派遣労働者の直接雇用を強いられるなどさまざまな法的リスクを防ぐためには、派遣法の規定の枠組みを理解して同規制を遵守することが、これまで以上に求められる。
また、18年から規制がさらに複雑化したため、派遣の活用にあたり、より慎重な対応が求められる。それでもなお派遣を使う必要性がどこにあるのかを(1)労働者の採用方法(採用難の企業がよい人材の直用化を視野に入れ、最大3年間適性を見極める)(2)専門性の高い人材確保(3)労働力の調整機能――という3つの活用の仕方に照らして、再度見直す必要があろう。

<質疑応答・討論>

質疑応答・討論では、派遣先均等・均衡方式を適用する場合の派遣先の訴訟リスクや派遣元労使協定方式の実務、ハラスメント対応などに関する質問が多数寄せられ、弁護士から実務的なアドバイスがなされた。

【労働法制本部】

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