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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年8月8日 No.3419 シンポジウム「2040年の社会保障のあり方を検討する」を開催 -21世紀政策研究所

21世紀政策研究所(飯島彰己所長)は7月23日、東京・大手町の経団連会館で社会保障に関する研究プロジェクト(研究主幹=森田朗津田塾大学総合政策学部教授)の成果を基にシンポジウム「2040年の社会保障のあり方を検討する」を開催した。同プロジェクトでは、昨年12月から、今後の人口構造の変化が社会保障に及ぼす具体的な影響と課題について、財政・医療・介護・society 5.0の観点から総合的に研究した。近々、報告書を取りまとめる予定である。シンポジウムの概要は次のとおり。

■ 2040年の社会保障のあり方を検討する
(森田朗研究主幹)

少子高齢化、人口減少のもとで、人口増加を前提とした社会保障の各制度の維持が難しくなってきている。政策的にダウンサイジングを行っていかなければならない。そのためには、正確なデータに基づいてITを活用し効率化を進める必要がある。

■ 社会保障費用負担のあり方
(西沢和彦研究副主幹・日本総合研究所調査部主席研究員)

社会保険料が所得再分配に多用され、負担と受益の関係があいまいになり、社会保険の公平性・効率性が低下してしまっている。また現行の公費投入方法も、社会保険料全体を抑制する方式になっており、結果として高所得者層への公費投入も多く非効率になってしまっている。低所得の家計に対してはピンポイントで公費を投入できるようにし、社会保険料を通じた再分配は最小限にとどめるのが望ましい。そのためにも、効果的な制度の構築に加え、リアルタイムかつ包括的な所得捕捉を可能とする方法を整備し、実効性を確保すべきだ。

■ データ基盤にもとづく医療介護サービス提供の現状と課題
(松田晋哉研究委員・産業医科大学医学部公衆衛生学教授)

将来にかけての人口動向はほぼ確実な未来であり、予測に基づいて対策していく必要がある。人口構造の地域差が拡大し、地域の医療介護のあり方をそれぞれの地域の実情に合わせて検討する必要がある。生産年齢人口が減少するなかで1人当たり医療費が上昇するので、医療サービスの提供について現状維持はできない。終末期のあり方を医療、介護、生活空間などの観点から総合的にデザインしなければならない。そのためにはITを活用し医療・介護の連携を進め、地域ごとにリアルタイム把握が可能な体制を構築するとともに、医療・介護の関連データベースの標準化を進めるべきである。

■ 誰もが参加できる社会に向けたチャレンジ
~認知症未来共創ハブと健康の新しい概念を手がかりに
(堀田聰子研究委員・慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科教授)

高齢者にとって非医療ニーズは、重要であるものの見逃されがちである。不調に陥る高齢者に対し医療サービスを提供するだけではなく、その背景にある環境的要因を探り、「社会的処方」を検討する必要がある。高齢者の感じる「くらしにくさ」に着目し構造的に把握することが重要である。健康の新しい概念として「ポジティブヘルス」(社会的・身体的・感情的問題に直面したときに適応し、自ら管理する能力としての健康)に着目すべきである。

■ Society 5.0実現による社会保障費の最適化に向けて
(甲斐隆嗣研究委員・日立製作所社会イノベーション事業推進本部事業戦略推進本部アーバン&ソサエティ本部長)

Society 5.0時代では、全体最適とQOL(Quality of Life)向上の考え方をもとに、技術イノベーションを中心として課題解決すべきだ。特にサービス提供者の不足が予想される介護分野への適応は重要である。今後、社会保障費の抑制と国民生活の向上を同時に実現する必要がある。技術、制度の革新を推進すれば、日本の社会保障モデルをパッケージとして海外にビジネス展開できるだろう。

<パネルディスカッション>

森田研究主幹をモデレーターとして、西沢研究副主幹、松田研究委員に加え大和総研の鈴木準政策調査部長がパネリストとして登壇し、報告書へのコメントや制度改革、イノベーションによる生産性向上とサービス提供価格低減、society 5.0の実現による標準化、ネットワーク化などについて議論した。

【21世紀政策研究所】

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