経団連(中西宏明会長)は9月11日、第4次安倍第2次改造内閣の発足を受けて、「新内閣に望む」を建議した。成長戦略の推進、経済構造改革の推進、持続可能なエネルギー・環境政策の実現、経済外交の積極展開に加え、国家的イベントの成功や震災復興の着実な推進と東北の再生・創生ならびに防災・減災・国土強靱化の強力な推進等を求めた。全文は次のとおり。
新内閣に望む
激化する米中貿易摩擦、刻々と迫る英国のEU離脱、混乱する中東、膠着状態が続く北朝鮮問題および日韓関係など、国際情勢は混迷を深めており、世界経済の先行き不透明感が増している。こうしたなか、わが国では先の参議院議員選挙を通じて、政治の安定が継続することとなった。新内閣には、安倍総理の強いリーダーシップのもと、大胆な改革を断行し、日本経済の新しい安定成長の仕組みを築くことを要望する。
最優先課題は、Society 5.0の社会実装を中心とする成長戦略の推進である。本年6月に閣議決定された「骨太方針2019」「成長戦略実行計画」ならびに「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」等の着実かつ迅速な実現を求める。
経済構造改革も急務である。10月の消費税率10%への引き上げを踏まえ、持続可能な全世代型社会保障制度の構築に向けた改革の道筋を早期に示すとともに、経済成長との両立を前提とした財政健全化を着実に進める必要がある。同時に企業活動の活力向上や国際競争力の強化に資する規制改革や税制改革等を通じて、世界で最もビジネスがしやすい国になることを期待する。
また、経済成長と両立する持続可能なエネルギー・環境政策の実現も不可欠である。特に、国際的に遜色のない価格での安定した電力供給を確保し、Society 5.0の社会実装を進める観点から、電力投資を活性化する環境整備を進め、日本を支える電力システムの維持・高度化を実現する必要がある。
さらに、長期安定政権の強みを活かし、経済外交の積極的な展開を望む。一国主義に与することなく、ルールに基づく自由で開かれた国際経済秩序の維持・強化に向けて主導的役割を果たすことを期待する。
経団連は新内閣と緊密に連携し、グローバルなデジタル化を真正面から受け止め、新たな人間中心の社会Society 5.0を実現することで、世界経済の成長とSDGsの達成に貢献する。
実現が求められる主要政策課題
1.成長戦略の推進
Society 5.0の実現
オープン・イノベーションの促進
イノベーションエコシステムの構築
Society 5.0の実現に資する人材育成
データ利活用の促進
自由な越境データ流通の確保
サイバーセキュリティの強化
AI(人工知能)活用の促進
スマートシティの実現
デジタル・ガバメントの推進による行政の効率化・高度化
柔軟で多様な働き方の拡大など働き方改革の推進
女性活躍とダイバーシティ・インクルージョンの推進
地方創生の推進
2.経済構造改革の推進
持続可能な社会保障制度の構築
財政健全化の実現に向けた歳出・歳入改革
企業活動の活力向上や国際競争力の強化に資する規制改革、税制改革
3.持続可能なエネルギー・環境政策の実現
資源の安定調達、電力システムの維持・高度化
民主導のイノベーションを軸とした気候変動政策の推進
実効性あるプラスチック資源循環の推進
4.経済外交の積極展開
ルールに基づく自由で開かれた国際経済秩序の維持・強化
― TPP11の参加国拡大、日EU EPAを基盤とする規制協力の強化、
共同声明に沿った日米貿易協定の早期実現
― 東アジア包括的経済連携(RCEP)、日中韓FTA等の早期かつ高水準での実現
― WTO改革の推進
主要経済パートナーとの関係強化
戦略的なインフラシステムの海外展開促進
5.国家的イベントの成功
ラグビーワールドカップ2019
2020年東京オリンピック・パラリンピック
2025年大阪・関西万博 等
6.震災復興の着実な推進と東北の再生・創生ならびに
防災・減災・国土強靱化の強力な推進